日本床矯正研究会について

札幌市西区山の手の歯医者「シリウス山の手歯科」院長の島貫です。

 

皆様、少しずつ寒くなってきましたがお元気ですか?
今回は当院がかかわっている組織についてお話ししたいと思います。

 

私は北大卒業後大学の医局に残りまして、加藤 熈教授(当時)のもと歯周病を学び、その後札幌の琴似で開業いたしました。矯正も興味がありましたが、抜歯矯正が当たり前で腑に落ちないことが多くMTMという歯周病で動いてしまった歯を元に戻したり、虫歯が深い歯を引っ張って虫歯でない部分を歯茎の上までもってくるような部分矯正しか行っておりませんでした。
しかし、診療していると大人の歯に生え変わろうとしている子供の歯列不正、歯の隙間が足りていない子供を目の当たりにし、このまま放置されると歯並びがさらに悪化することが予想されておりましたが、乳歯永久歯の連続抜去法など公式には抜歯せざるを得ない治療法が主流でなんとか助けられないかと治療法を探していたところ、床矯正に出会いました。昔からヨーロッパで行われている治療法です。これは床装置という拡大ネジの付いた取り外しのできる入れ歯のような形状の装置を、自分でネジを回して拡大しながら夜間に自分で装着して歯並びを広げていく治療法です。
しかしその装置の扱い方や、治療法は考え方が統一されておらず、何が正しいかわからず困っていたところ、東京で開業されている鈴木 設矢先生が主催する床矯正研究会に巡り合いました。歯を抜かないで歯列を育てて矯正することが大きな柱で、歯並びだけでなく美しい顔も育てていくという考え方や使命に大いに共感し、入会して勉強しました。考え方がしっかりしておりますので迷うことなく15年あまり治療を進めてまいりました。
その後床矯正研究会の副主幹に就任された福岡市で開業されている花田 真也先生のもと第3期スタンダードコースでさらに学び、修了しました。

 

2020年2月に一般社団法人日本床矯正研究会が設立され、組織として鈴木 設矢先生が会長に、花田 真也先生が理事長に就任し、以下全国6地区に理事・評議員総勢15名の役員が配置され就任いたしました。私も誘われて北海道・東北地区の評議員に就任しております。
床矯正は成長期のお子様に対しとても理にかなった優しい治療法です。問題点が見つかった時点で解決法を示し悪化していく前に対応していくのですが、かかりつけ医でも様子を見ましょうと問題を先送りにして最終的には抜歯矯正になってしまうケースが多々あります。
繰り返し申し上げますが、歯列が完成せず、成長期にある子供の歯並びの問題はまだまだ一般的には体の成長が止まるまで待ちましょう、それから歯を抜いて隙間を作って矯正しましょうという流れが主流だと思います。マウストレーナーやマウスピース矯正などが出てきて変わってきていますが成長期にはあまり介入しない考え方です。

 

当院では乳歯列期においてはバイオファンクショナルセラピー(BFT)、いわゆる口腔機能の訓練、前歯を使って食事したり、顔の周りの筋肉を使ったり、舌の動かし方を正したり、悪習癖を取り除いたりすることで、歯槽骨という歯が並ぶ骨の領域を育てていき、歯並びの乱れを防ぎながら歯の交換期に備えていきます。この時期はパナシールドやプレオルソというマウストレーナーを用いることがあります。
次に歯の交換期(混合歯列期)に入るとBFTを続けながら、歯の生える隙間が足りない場合や歯並びに問題があった場合は直ちに床装置を使って矯正の介入をします。成長期に合わせて確実に歯列を拡大していき不正咬合の原因も取り除きながら正しい歯列、顔の成長を作り上げていきます。成長期でなければ解決しない問題もあります。
例えば上顎骨は頭蓋骨とつながっていて脳の成長に合わせて成長していき、成長が止まるのが14歳前後で上の前歯の付け根が引っ込んでいる状態(相対的に出っ歯に見える)を治したければその年齢までに上顎骨を育成する治療をしなければならず、待っていては治す機会を永久に失ってしまいます。それに対し、下あごは体の骨格に合わせて成長しますので成人まで成長を続けます。反対咬合のように下あごの過成長にならないようにコントロールすることが必要です。このように成長期ならではの対応法や治療があるので放置すべきではありません。
成人になってから始めるともう骨の成長は望めないので矯正するための隙間は歯を抜くか歯と歯の間の部分を削るIPRという手法で作ることが多くなり、歯列を拡大することが難しくなります。(拡大はできるのですが、骨は成長せず、骨の外まで歯を動かすことができないので限りがあるということです)

 

このように矯正はいつ始めても同じではありません。問題が見つかったら様子を見て良くなるのを待つのではなくて、手を打っていかなければなりません。放っておくと問題は複雑化して治療が難しくなるだけでなく、治療の好機を逃してしまいます。
ただし、混合歯列期にしっかり対応できる医療機関は多くはありません。どこに行ったらよいか、近くにないのかお困りになる方もいらっしゃると思います。
それでは私が所属している日本床矯正研究会を検索してください。会員が全国各地に存在します。お近くの会員所属の歯科医院にお問い合わせください。考え方が一致しているので私どもも、患者さんが転居した場合転居先に近い会員の歯科医院に紹介して治療の続きを依頼していますので安心して治療をすることができます。
もちろん当院にご相談されること大歓迎です。お困りの方、ぜひお気軽にご相談ください!
歯並びに問題がないように見えても実は問題があることが多々あります。いずれ症例をお見せできればと思いますが、歯が交換したら歯科医院を受診して歯並びを検査してもらうことが大切です。