歯列不正とその要因

札幌市西区山の手の歯医者「シリウス山の手歯科」院長の島貫です。

 

今回も矯正のお話をいたします。

 

一番最初に発症し、最も厄介な歯列不正は何だと思いますか?
前歯の歯の重なり=叢生でしょうか?
違います。答えは“反対咬合”です。

 

個人差がありますが、生後6ヶ月くらいに下の前歯AAがまず生えます。そして隣のBBも生えて、次に上の前歯BAABも生えて一般的に1歳になるまでに乳歯の前歯の歯列が完成します。この時は歯並びを邪魔する要因はないので歯が重なる叢生の発症はまれです。
しかし、上の歯は上顎骨にくっついていて位置が変わることはないのですが、下の歯は下顎骨にくっついております。下顎骨は顎関節の靭帯と筋肉によって上顎骨にぶら下がっています。関節の動く範囲で自由に動きますので、上顎の歯に対してかみ合う位置を変えることができます。奥歯がない状態なのでなおさら自由に動いていきます。そのため早い子で1歳くらいから前歯の反対咬合が出現します。

 

以前はこの時期の子はよく泣く子や、顎を前に出す癖のある子ではないかと考えていて、顎を引っ込める練習をしましょうと指導しておりました。
これは新しい情報なのでぜひ知っておいてください。

 

なぜ、顎が前に出るのでしょう。
これは要因が2つあります。姿勢の問題と、舌の問題です。
姿勢は上を向くと顎が自然に前に出ます。その機会が多いと機能性の反対咬合になると考えられます。

 

上を向いてしまう機会は主に2つです。
寝ている時と、抱っこしている時です。
寝ているときは枕が重要です。頭が下がらないようにしっかり頭をささえる枕やタオルを敷いて寝かせるのが良いです。
抱っこするときも頭が下がらないようにしっかりと腕やタオルで頭を支えるのが重要です。
該当する方は是非やってみてください。

 

もう一つの要因の舌の問題は、舌が前方に伸びると下あごも引っ張られて前方に出るということです。極めて早期に反対咬合になったお子様はいつ離乳食から固形物に移行されたか覚えていらっしゃるでしょうか。これが早すぎると反対咬合になる要因となります。
早すぎるというのは下の前歯が生える前ということです。
固形物はそれを捉えて確かめようとする舌の動きを誘導します。舌が伸びてきて、それにつられて下顎が前に出てしまいます。
ところが下の前歯AAがあると舌がAAにぶつかり上方に上がり、それ以上前に伸びてきません。過剰に顎が前に出ることもなくなります。
この過剰な下あごの突出の繰り返しが乳前歯の機能性の反対咬合を作り出す原因と考えられます。
これが判明したのは私たち日本床矯正研究会の理事長を務められている花田 真也先生が自分の歯科診療所に保育園を併設して乳幼児の子供たちの日常の生活を観察する取り組みの結果です。

 

あとは、子供が上を向かないように上から話しかけないこと。棒状の固形物を下側から前歯にくわえさせかじってもらうことが良いそうです。
このように乳歯列のうち(青信号)は、反対咬合の歯列不正はほとんどが機能性で、機能が良くなると反対咬合は簡単に治せます。
これが次に混合歯列期(黄信号)や10歳以降の第二次成長期(赤信号)まで治さずにいると治療が困難になるだけなく、骨格性の問題も生じて顔つきの問題になり外科手術しか治療法がなくなります。
他の歯列不正の問題より早期に発症し、治療の適齢期も早いので注意が必要です。

 

家族や親戚のかたに反対咬合の方がいらっしゃると決して遺伝の問題ではないのですが、そうなりやすい素質があるので注意が必要です。
ぜひ、参考になさってください。