口を正しく育てることが体を育てることに影響する?

girl having a dental checkup

皆さま、ご機嫌いかがですか?札幌も早くも雪が溶けてしまいましたね。今年の春は早そうですね。
さて、今回は口腔機能の発達についてのお話の続きとなります。
前回は顔の成長についてお話ししました。
今回はある保育園の事例をもとに、口を正しく育てることが体を育てることにいかに影響するかについて学んだことを皆さんにもお伝えしたいと思います。

健康寿命について

日本人の寿命はまだ伸び続けておりますが、それ以上に健康寿命が大事だと言われております。健康寿命とは健康上のトラブルによって、日常生活が制限されずに暮らせる期間と定義づけされています。日常的に介護などを必要とすることなく、自立した生活を送れている期間をいいます。

健康寿命を伸ばすことは日本の医療費を削減するために非常に重要なことです。近年の研究で寝たきりになるまでには口から衰えが始まることが分かってきました。

そのため、歯科の重要性が増し、厚労省も老人に対する対策として口腔機能低下症という病名を新たに付け、老人の口腔内における機能低下に対して予防措置を行うようになりました。

口腔機能発達不全症のチェック項目

しかし、将来寝たきりになるか、長寿健康の分かれ道が幼少期の問題にあることがわかってきました。そのため口腔機能発達不全症という乳幼児期、小児期に適用される病名も新設されました。これを判定するためにチェック項目があり、これは離乳完了前と離乳完了後で項目が分かれています。

チェック項目は、A機能、B分類、C項目に分かれAは離乳完了前も離乳完了後も同じ3つの機能、Bは離乳完了前では5つの分類、離乳完了後では6つの分類、Cは離乳完了前は13項目、離乳完了後は17項目あります。

離乳完了前

A機能

①食べる機能
B分類
(1)哺乳
C項目

  • 先天性歯がある
  • 乳首をしっかり口に含むことができない
  • 授乳時間が長すぎる、短すぎる
  • 哺乳量、授乳回数が多すぎたり少なすぎたりムラがある
    (2)離乳
    C項目
  • 開始しているが首のすわりが確認できない
  • スプーンを舌で押し出す状態が見られる
  • 離乳が進まない
    A機能
    ②話す機能
    B分類
    (1)構音機能
    C項目
  • 口唇の閉鎖不全がある(安静時に口唇閉鎖を認めない)
    A機能
    ③その他
    B分類
    (1)栄養(体格)
    C項目
  • やせ、または肥満である
    (2)その他
    C項目
  • 口腔周囲に過敏がある
  • 上記以外の問題点

離乳完了後

A機能

①食べる
B分類
(1)咀嚼機能
C項目

  • 歯の萌出に遅れがある
  • 機能的因子による歯列・咬合の異常がある
  • 咀嚼に影響するう蝕がある
  • 強く咬みしめられない
  • 咀嚼時間が長すぎる、短すぎる
  • 偏咀嚼がある
    (2)嚥下機能
    C項目
  • 舌の突出(乳児嚥下の残存)が見られる(離乳完了後)
    (3)食行動
    C項目
  • 哺乳量・食べる量、回数が多すぎたり少なすぎたりムラがあるなど
    ②話す
    B分類
    (1)構音機能
    C項目
  • 構音に障害がある(音の置換、省略、歪み等がある)
  • 口唇の閉鎖不全がある(安静時に口唇閉鎖を認めない)
  • 口腔習癖がある
  • 舌小帯に異常がある
    ③その他
    B分類
    (1)栄養(体格)
    C項目
  • やせ、または肥満である
    (2)その他
    C項目
  • 口呼吸がある
  • 口蓋扁桃等に肥大がある
  • 睡眠時のいびきがある
  • 上記以外の問題点

このような項目を診査して、あてはまるものがあれば口腔機能発達不全症と診断されます。
口腔機能を正しく発達させる管理と対策が必要となります。
保育園の話しに戻ります。

ある保育園の事例

保育園で園児を観察すると口腔機能の発達が悪い子供は口の中の環境が悪くなり、呼吸も悪くなり気道を開くために顎を突き出すようになり、その結果猫背になります。
そうなると、かかと重心になり、それを補うために浮指という状態になります。
浮き指とは、足指が地面に接していない状態のことをいいます。 人間の足指は、左右に10本ありそれぞれが地面に接していることが大切です。 立った状態で体の重心をかかとに移動させると足指が地面から離れるのが分かります。 それが浮き指の状態で、体の重心の位置がかかと側に移ってしまっている状態とも言えます。
筋肉は上から下まで筋膜でつながっているので姿勢と咬合は密接に関係しています。
ここで土踏まずに注目してみます。

人間は歩くとき足を交互に踏み出して歩いていきます。

このとき重要な役割を果たすのが足裏です。足裏は着地したとき最初に衝撃を受ける部位になります。

足裏の中でも、地面から伝わる衝撃を和らげる機能を司っているのが土踏まずです。

土踏まずとは、その名の通り足裏の中でも土を踏まない、つまり地面と密着しない窪みを意味します。

この窪みは足裏のアーチ構造によって生み出されています。

足裏がアーチを描いているおかげで、地面から伝わる衝撃が緩和されます。

アーチが無い状態、いわゆる扁平足になっている人は、アーチがある人に比べて強い衝撃を受けてしまい、早く疲れてしまいます。
保育園児の4~5歳の子の土踏まずのあり、なしを調べてみたところほぼ半々でした。
また、歯と歯の間に隙間がある子と隙間がない子の割合は約1:3でした。
ブログを見ていただいている方はどちらが良い状態かおわかりですね。歯に隙間があるほうが健全と言えます。
今度は土踏まずのある子と土踏まずがある子とない子(ほぼ半々の割合)の中で、歯の隙間がある子の割合を調べたところこちらもほぼ半々でした。
これは何を意味するかというと、足の成長が良くとも口の成長が良いとは言えないということです。
今度は歯の隙間がある子と歯の隙間がない子の割合は1:3でしたが、その中で土踏まずのある子の数をを調べてみました。
すると、この1:3の割合にかかわらず、土踏まずのある子の数はほぼ同数でした。歯の隙間がある子のほとんどに土踏まずが見られたのです。
このことは、口の成長が良い子供は足の成長も良いということを示しています。
裸足で外でよく遊ばせる方針の保育園や幼稚園は数多く存在しますが、口の中を良くすることにはあまり関係がなかったことになるかもしれません。
それではどうすると口の中が良くなるのでしょうか。
スイスの生物学者のアドルフ・ボルトマンは人間は上から下に、中心から末端に成長していくと成長の方向性について研究しています。
詳しく述べると、成長の起点である口(頭部)の成長が関節や全身の成長を牽引しているそうです。
脳幹から生命が始まり、口から消化器機能が発達、呼吸から心肺機能が発達します。
成長にとって口や呼吸は非常に大切ということになりますね。
そのため、足が育っても口が育っていない子が多いです。

注目すべきは姿勢

皆さん、注目すべきは姿勢です。
皆さんは子供が食事する時どのように座らせておりますか?正座させて食事させていますか?それとも椅子に座らせていますか?
一番良いのは正座させて食事させることです。どうしてかというと食事の時の噛む力が一番出るからです。15%から20%増すと言われています。
それに対し、椅子で食事させると一番注意しなければならないのは、椅子をしっかりと調整して足がちゃんと床についていなければなりません。そうしないと足をぶらぶらさせてしまいます。そうなると噛む力が出なくなります。また、姿勢も悪くなり、誤嚥もしやすくなります。
正座すると座骨でしっかりと体を支えますが、椅子での足ぶらぶらは仙骨で不安定に体を支えているにすぎません。
そういえば昔は食事の時にはちゃぶ台のように低いテーブルを囲み、家族そろって食事していたものです。皆正座して、水やお茶は食後に提供されていたので、しっかりと咬んで食事をしていたはずです。
次回もこのお話の続きをしましょう。