義歯(入れ歯)の種類

入れ歯

皆様、お元気ですか?だいぶ春めいてきましたね。季節の変わり目なので体調に注意してください。今回は前回の続き、入れ歯の話です。

前回は入れ歯の概要、作る工程、入れないとどうなるかなど解説してきました。

では、入れ歯にはどういう種類があるでしょう。

入れ歯の種類

まず、保険の入れ歯と保険外の入れ歯があります。

保険の入れ歯

保険の入れ歯はどういうものでしょうか。

本体はレジンという材料を使用したレジン床です。歯は硬質レジンとういものを用いた人工歯を用いています。欠損部のほとんどはこのレジンの材質の部分が使用されます。

入れ歯を支える歯にひっかける部分はクラスプと呼ばれて、保険では金属を使います。これにはいくつか種類があります。

ワイヤークラスプという細い針金のようなものは、既成のクラスプ線を屈曲して作ります。柔らかいので歯にやさしいですが、維持力が弱く入れ歯が動きやすいです。キャストクラスプは鋳造して作ります。しっかり歯を把持してくれます。しかし、把持が強すぎて歯を痛めることがあります。

コンビネーションクラスプは表側がワイヤーで、裏側が鋳造したアームでできていて両者の中間のような設計です。

また、審美性を考慮したI-BARという針のようなクラスプもありますが維持力が弱いです。

このように、保険の入れ歯は鉤歯という入れ歯を維持する歯に決まった金具を使って引っかけるもので、どの歯にひっかけるかという設計がすべてで、あまりバリエーションがありませんでした。

ただし、今回の保険の改正から、今まで自費扱いだったマグネットが使えるようになりました。これは残した歯の状態が悪くて鉤歯として使えない歯を、残根の状態にして残して、そこにマグネットがくっつくキーパーという金属のキャップを埋め込み、歯をほぼ平らな状態になるように金属の蓋をします。入れ歯の内面の方にマグネット本体を埋め込みます。

こうして残根の歯のキーパーと入れ歯の中のマグネットがほぼ接触すると、磁石の力が働き入れ歯がずれないようにくっつきます。

ただし、入れ歯が少しでもずれてしまうと維持力が弱くなり入れ歯が外れてしまうので、あくまで通常のクラスプの部分があって、補助的なものとして使うべきだと思います。

長所は入れ歯の中に埋め込んでしまうので、見た目が気にならないことです。

短所はMRI検査をするときにハレーションという画像のエラーを引き起こすことがあるので、入れる場所によってはキーパーを外さなければならないことがあります。それとキーパーの部分が高さがないので磨きづらく、虫歯を作ってしまいます。

ですので、冠として使えない歯の延命のようなものとして考えるべきでしょう。

自費の入れ歯

次に自費の入れ歯の説明です。

自費の入れ歯は設計が自由です。そのため、比較的安価なものからとても高価なものまであります。金属をほとんど使わないものから、がっちりと金属のフレームで歯と密着させるものまであります。

入れ歯は取り外して使用するものです。そのためどうやって歯にひっかけるかが特徴となります。

コーヌス義歯

入れ歯を維持する歯を削って理想の形にした内冠(6度の傾きがある冠)をかぶせて、入れ歯の維持歯にします。高さを落とすので、入れ歯がないとかみ合いません。そして入れ歯の本体に外冠という内冠にぴったり合う冠を作って、内冠に外冠をはめることで強力な維持力が働きます。ちょうど茶筒のように抵抗があり外れずらいです。茶筒はご存知ですか?

ただしとても精密なものなので、少しでも合わなくなると入れ歯が入らなくなってしまいます。作り上げるのに工程が多く、口の中に合わせるのにとても労力がかかり、費用も非常に高額になります。

ミリングデンチャー、アタッチメント義歯

こちらも入れ歯をひっかける歯に加工をします。ただし、こちらは入れ歯がなければ歯が無くなるようにはなりません。加工を施す歯は、かぶせ物にします。技工所で被せ物にきれいに溝を掘って、そこに合わせた金属の加工を入れ歯側にもします。

そうやって溝と溝を合わせることで強力に歯と入れ歯がくっつきます。よくある入れ歯のように金属のバネを外側に大きく出す必要がないので、こちらも審美的には優れています。

こちらも加工が精密なので費用もかなり高めです。

上記の入れ歯はフィット感もよく、見栄えもいいので優れた義歯ではあるのですが、費用が高いのと維持している歯にかなり負担をかけてしまいます。

金属床義歯

こちらは総入れ歯と、部分入れ歯があります。

総入れ歯は入れ歯を支える歯が無いので顎堤粘膜を大きく覆って吸盤のように吸い付く必要があるので粘膜の大部分を覆ってしまい、保険の入れ歯だとその部分がレジンという樹脂で厚みがあり温度も感じずらくなってしまいます。食事が美味しくなくなるので自費ではレジンの部分が薄い金属になった金属床義歯があります。薄いので快適になり、温度もよく感じられるようになり食事も美味しくなるようです。使用する金属ではコバルト床とチタン床があり、チタン床はより軽く料金も高くなっております。

部分入れ歯も金属の部分が多く、より薄くがっちり適合しますので快適さが増しております。しかし、バネの部分も金属なので審美的には劣ります。

シリコンデンチャー

入れ歯の内面が柔らかいシリコンで裏打ちされた入れ歯です。痛くない入れ歯として普及していますが、入れ歯が分厚くなるのと、シリコンがはがれやすく調整が難しいのが欠点です。そもそも入れ歯が痛くなる原因を無視しているので当院ではほぼ使いません。

ノンクラスプデンチャー

当院ではナチュラルデンチャーとして取り扱っております。特別な樹脂を使用して金属のクラスプの部分(アーム)が透明またはピンク色となり、審美的に優れていて入れ歯だと気づかない仕上がりです。しかし分厚くなるのと、耐久性に劣りアームが劣化して汚れあまり長い年数で使用できない、修理が技工所に送らないとできない、維持力が甘く入れ歯が動きやすいなどの欠点があり、最近はあまりお勧めしていません。違和感も強いです。金属のバネがどうしても受け入れられない人にご提案しています。

ミラクルデンチャー

そして今年から当院で始めたミラクルデンチャーについてご紹介します。

この入れ歯はこれまで述べさせてもらった入れ歯の欠点をほぼ解消した仕上がりとなります。

その秘密はミラクルフィットという独特の構造にあります。

皆さん入れ歯はどうやって取り外ししますか?歯の上からクラスプという金属のバネを鉤歯に合わせて下に押して入れますね。外すときはバネの部分を指で引っかけて上に引き上げますね。この際どうしても鉤歯に負担がかかってしまいますね。

ミラクルデンチャーではクラスプの代わりにキーとロックという装置があります。

ミラクルデンチャーはどこから入れるのでしょうか。

なんと横から入れるのです。キーという小さなアームを対象の歯に横から入れて当てロックという部分を押すとカチッとはまります。そうするとどうでしょう、入れ歯がしっかりと歯に固定されるではありませんか!入れ歯が全く動きません。しかも金属は使用せず、アームの部分も小さいので審美性に優れ、入れ歯が薄く小さい構造になっています。

入れ歯が動かないので痛くなく、物もはさまりずらくなっています。外すときはロックという部分をつかんで引っ張ると取ることができます。キーとロックの部分は設計によって場所がさまざまです。動揺している歯でも根元から支えるのでしっかりと守ります。残存している歯を壊す入れ歯ではなく、守る入れ歯なのです。画期的ですね。

詳しくは動画をご覧になってください。