幼児期の食事において確認すること

Pediatric dentistry

皆様、お元気ですか?札幌は早くも積雪が無くなったので健康のために自転車で出勤を始めました。健康のため、しっかり運動しましょう。
さて、今回も前回のお話の続きをしたいと思います。

小児の口腔機能育成の勉強をしていくと、正しく子供を成長させていくとそもそも歯並びは悪くならず、矯正の必要は無くなると実感しています。これからお話しする内容は、引き続きお口の成長と体の成長に対しての正しい取り組み方についてまずは説明を続けます。皆様が知らなかった情報もたくさんお伝えしますのでぜひこれからも続けてお読みください。

幼児期の食事において確認すること

幼児期の食事において確認することは

  1. 姿勢(足が床についているか)
  2. くちゃくちゃ音が出ていないか
  3. 箸が使えているか
  4. 食べこぼしがあるか
  5. 食べ残しがあるか(偏食)
  6. むせることがあるか

以上の6項目です。

①姿勢(足が床についているか)

①の姿勢については前回お話ししました。正座するまたは、足のうらがしっかりと床についた状態でなければ噛む力が出ないとお伝えしました。

②くちゃくちゃ音が出ていないか

くちゃくちゃ音がするのはお口ポカンとしている子が多いです。口呼吸や口唇閉鎖ができていないからです。口を閉じて噛んでいるかどうか観察してください。

③箸が使えているか

これは、指の巧緻性(こうちせい)=器用さの問題です。
箸が上手に使えない原因は薬指と小指のパワーグリップ不足です。
指の器用さは親指と人差し指、中指の3本で決まります。その器用さに影響するのが薬指と小指の握力=パワーグリップです。手をギュッと握りしめてみてください。小指と薬指に力が入っていますね。握力のある子は器用なんです。
ちなみに小中学生の体力は有る一部の能力がずっと低下してきているそうです。なんだと思いますか?
体力テストでは背の高さや走る速さは上がってきているそうです。その一方握力とボール投げだけ低下してきているそうです。
これは上から末端の成長を忘れた、つまり噛むことをしなくなり、パワーグリップが落ちて子供たちが不器用になっていることを示しています。
成長の起点である口や顎の成長発育が悪いと全身の成長発育や関節に影響を及ぼします。
手に関しては著しい握力低下が起こると子供たちの器用さを奪ってしまい、ひもが結べない、箸が使えない、うまく鉛筆が握れない、筆圧が弱くなって濃い鉛筆でないと書けないなどの問題が起きています。
鉛筆の濃さは皆さん小学生の頃はどれを使っていましたか?私はHBで薄いのが好みの子はH,濃いのが好みの子はBを使っている子がいました。現在は4Bも使われているそうです。ある学校ではなんと6Bを使っているところもあるそうです。
4Bなんて、デッサンや製図で使う特殊なものと思ってましたが、そこまで影響があるのかとびっくりしてしまいました。
噛むことが脳に作用する証拠があります。MRIで脳の活動を観察すると、歯を食いしばると脳が反応してその結果握力が上がりました。つまり、握力は抹消だけで起きている現象ではなく、噛む行為が脳に影響を与え、それが身体能力に影響しているということになります。
噛まなくなった子供が箸を使えないのは必然と言えるのでしょう。

④食べこぼしがあるか

これは箸の巧緻性が悪く、箸がうまく使えないことと、口呼吸などの口唇閉鎖に関する問題が考えられます

⑤食べ残しがあるか(偏食)

原因は1つはお腹が空いていない事。外遊びなど体を使って十分に遊んでいないこと、おやつを適切に与えていないことがあげられます。
もう一つ、これはとても重要な問題です。味覚が育っていないということです。つまり味が薄いものは好まず、残してしまうということです。
ある県の給食で薄めの味の給食を出したところ、たくさん食べ残しが見られたと報告があります。今の子供たちはスパイスの効いた、味付けが濃いものが大好きです。私の家庭でも子供たちは薄味だとなかなか食べてくれませんでした。
味覚は3歳までに決まります。
味は5種類(甘味、塩味、うま味、苦味、酸味)あって、それぞれがシグナルとしての役割を果たしています。
どういうことかというと

  • 甘味→糖の存在(エネルギー源)を知らせる
  • 塩味→ミネラル(体液のバランスに必要)の存在を知らせる
  • うま味→タンパク質(体を作るのに必要)の存在を知らせる
  • 苦味→毒の存在を知らせる
  • 酸味→腐敗の存在を知らせる

のそれぞれの役割があります。

東京医科歯科大学で埼玉県の小1~中二の子供たちに「酸味」「塩味」「甘味」「苦味」の味覚の認識調査を行っています。その結果いずれかの味覚を認識できない子は全体の31%、なんと3人に1人に味覚異常がありました。内訳は「酸味」が21%、「塩味」が14%、「甘味」が6%、「苦味」が6%でした。薄味の給食でH、食べ残しが多く、味が濃いものが好まれる傾向あります。
それでは味覚とはいったいどこで認識するのでしょうか。
味覚は舌の中にある味蕾という味細胞の集まりで認識します。味蕾は唾液で湿らされることで機能します。
また、唾液は噛むことによって唾液腺への刺激で分泌が促進されます。
唾液を出す腺は口腔内に3つあり、その場所によって舌下腺、顎下腺、耳下腺と呼ばれています。
舌下腺は舌の真下にある腺です。顎下腺は下あごの奥歯の下にあり、耳下腺は耳の下のあたりにある腺です。それぞれ舌を動かしたり、咬筋を使って噛んだり、飲み込んだりすることで刺激され唾液を出します。
そのため、噛むことをしなくなった子供は唾液が少なく、味蕾が十分に機能せず味覚障害を引き起こしている可能性が高いです。
従って食べこぼしのある子どもは噛んでいない事の証明と言えるでしょう。

⑥むせることがあるか

むせる子は以下の4つの項目に問題がある可能性がります。

  • 摂食機能
  • 咀嚼機能
  • 送り込み
  • 嚥下機能

これらのどれに問題があるか見極める必要があります。
この中で、送り込みが最も影響いたします。
嚥下時は通常舌が後方に動きます。送り込みの機能が未獲得なのであれば舌が前方へ行ってしまいます。
それを確認する方法は、人差し指と中指でお子さんの口角を引っ張って唾液を飲み込んでもらいます。
その状態を観察し、舌が歯の隙間から出てくるようでしたら、リバース嚥下と呼ばれる、舌の送り込みができない嚥下になっている可能性が高いです。また、そのような子は嚥下時に唇が動き、唇で飲み込んでいることも観察されます。
このように子供の食事の様子を姿勢、くちゃくちゃ音が出ていないか、箸が使えているか、食べこぼしがあるか、食べ残しがあるか、むせることがあるかを観察してみてください。
皆様、感受性期(臨界期)というものを聞いたことがありますか?
これは子供の正しい成長、機能の獲得において非常に重要な仕組みです。
次回はこの内容を中心にお話をしていきます。
楽しみにしていてください。