皆さま、ご機嫌いかがですか?いつもお読みくださりありがとうございます。
前回は美しい顔の話をしました。
では、もっと具体的にどのように美しい顔や口腔を作っていけばよろしいのでしょうか。
理想は妊娠中から始めることだそうです。妊娠中が一番自分の時間があるときです。その時に妊婦健診をして妊婦さんに子供が生まれたらどのような育て方をしたら良いか、どうやって正常な口腔を作っていくかのお話をしておくと良いそうです。
子供の抱っこの仕方、寝かせ方に注意して頭の形を良くすること。授乳指導や離乳食の与え方や、摂食指導も重要です。過去にも触れましたが正しい機能を正しい時期に獲得していくことが最重要です。変な悪習癖が付かないように気を付けることも重要です。特に舌の使い方、収まる位置が正しいこと、鼻で呼吸をして口を閉じていられるかをよく観察していかなければなりません。
そのようなことに注意しながら子供の成長を見守っていくのですが、それでも成長がうまく進まないことがあります。その場合どうするのでしょう。
矯正の治療は2種類
私は日本床矯正研究会に属しておりますが、私たちは矯正の治療は2種類あると考えます。
バイオファンクショナルセラピー
1つは生物学的機能療法であるバイオファンクショナルセラピーです。
これは、まずどうして正しく成長しないかという原因を考えて改善していくものです。そして正しく成長することで自分の力で治していく本来の姿です。
具体的には、
- 食事の内容や与え方、食べ方など食事の環境を見直すこと
- 口をポカンと開けている、頬杖をつく、指しゃぶりをする、爪を噛むなどの悪習癖を止めること
- 口を閉じて正しい姿勢を保つこと→呼吸にも関係します
- あいうべ体操やガムトレーニング他いろんな口の周りの筋肉、舌を運動させるMFT療法
などがあります。
器具を用いた矯正治療
2つ目は器具を使った矯正治療です。
こちらはあくまで補助的なものです。一般的にはこの考え方はまだあまり認められておりませんが、間違いなく正しいと考えております。
バイオファンクショナルセラピーをやり続けますが、補助的な介入が必要と考えた場合、
3~6歳では口の中へ入れて口唇、頬、舌に働きかけて正しい成長をサポートしていくトレーナー装置を使用します。トレーナー装置は柔らかいもの、固いものがあり、用途によって使い分けます。当医院では主にパナシールド、ムーシールド、プレオルソを使っています。
すでに触れておりますが、反対咬合の症例(Ⅲ級)では早期に治療開始しなければ治すことが難しくなるので装置を入れることができる3歳くらいからパナシールド又はムーシールドを入れて治療します。
口腔が狭く、口腔内を成長させていくことを強化する場合はプレオルソを使います。口唇の力を排除して口腔を広げやすくするものです。装置を入れた状態で口腔を使った運動して活性化していきます。
上記の装置はすべて舌を持ち上げて正しい位置に収まるようなガイドがついています。
そして6歳を過ぎて前歯部が永久歯と交換を開始してからは床装置の出番になります。こちらは床装置についているねじを計画的に巻いていき、床装置が拡大していくことで口腔内が拡がっていきます。パナシールドは併用可能ですが、ムーシールド、プレオルソは併用できないので床装置にバトンタッチします。
そもそも呼吸しやすい口の中はどうなっているかというと、上あごの左右の6番目の歯(第一大臼歯)の歯と歯の間の距離が42mm以上あるのが正常です。乳歯では乳犬歯Cの間の距離を図ります。
上顎のC-C間の距離が32mm以上、下顎のC-C間が23mm以上あるのdが正常と言われています。
これくらいないと舌が上顎にくっつきません。狭いと舌が喉のほうに落ち込みます。
舌が動けるスペースを作ってあげることが重要となります。
余談ですが、現在の70~80代の方の身体能力は非常に高いそうです。当時の子供は顎の小さい子はほとんどいなくて健康的だったそうです。
歯科界では8020運動、80歳までに20本以上の歯を残すという運動がかなり前からここなわれていて、すでに多くの方が達成されたのですが、80歳で20本以上歯が残っていた人はかみ合わせがⅠ級関係の人が多く、Ⅱ級、Ⅲ級の噛み合わせの人は少なかったそうです。Ⅱ級、Ⅲ級では口腔内が狭くなって難しかったのかもしれませんね。
繰り返し言いますが、鼻呼吸ができないと歯列不正になります。
口の中が狭い子供は口呼吸や無呼吸になりやすいです。
ここでもう一度奥歯のかみ合わせに着目してみましょう。
復習です。矯正では、奥歯や犬歯のかみ合わせを基準にします。
ANGLEⅠ級とは正常な基準となる噛み合わせで、上下左右の6番目の歯(第一大臼歯)のかみ合わせが下顎のほうが半咬頭前方に位置してかみ合っているかみ合わせです。もしくは上の犬歯が下顎の犬歯と第一小臼歯(3番目の歯と4番目の歯)の間に位置したかみ合わせです。
これを基準に、下顎が後方に位置してかみ合っているのがANGLEⅡ級の噛み合わせ、下顎が前方に位置してかみ合っているのがANGLEⅢ級のかみ合わせです。
ANGLEⅡ級は上顎骨の劣成長で、上顎骨が下方向に成長しています。この状態では下顎が上顎に押し込められた状況になります。このような子は気道が狭いので喘息持ちの子が多いそうです。
ANGLEⅢ級も上顎の劣成長と考えられます。
上顎骨が前方に成長しなかったと考えられます。
ANGLEの特徴
では、ANGLEの咬合の特徴をもう少し詳しく説明しましょう。
ANGLEⅠ級
- 口の広さが正常である
- 頸椎の形がS字状で正常
- 下顎が前方回転している
- 仰向けで寝られる
- 気道が正常である
- 舌骨の位置が正常である
以上正常な項目がほとんどです。
ANGLEⅡ級
- 口の中が非常に狭い
- 口呼吸をしている
- 下顎が後方回転している
- 仰向けで寝るのが難しい
- いびきをかきやすい
- 気道が狭く、頸椎が逆彎状になっている
の問題のある項目がほとんどです。
ANGLEⅢ級
- 頸椎が直線状になるストレートネック
- 口の中が狭い
- 口呼吸している
- 二重顎に見える
- 仰向けに寝るのが難しい
- いびきを書きやすい
- 舌骨が下がっている
以上、問題のある項目ばかりです。
上あごの成長は8割以上が6歳までに完成します。
歯科医院でも永久歯が生えそろうまで様子を見てくださいというところがまだまだ多いそうです。これは絶対だめで発育不全が問題なので、成長しているうちに改善しなければ、もっと言うと成長が追いつかなければだめです。
最初の成長のスパートが6歳くらいまでに終わり、そこから10歳位までは成長は緩やかになります。この時期が成長を追いつくチャンスです。
具体的には犬歯が生え変わる9歳くらいまでに上の第一大臼歯(6-6間)との間が42mm以上になるまで成長させること(上のC-C間32mm以上、下のC-C間23mm以上)です。
また、第二次成長期を過ぎて中学生になると成長は鈍化します。男の子は17歳まで、女の子は14歳まで成長しますが、このため小学生のうちに始めるのがベストです。
私は中学校の学校歯科医で、毎年中学校の歯科検診をしていますが、成長が足りない子をたくさん見つけます。中学校では残念ながら遅いです。上顎骨の成長は間に合いません。成長が終わってからの矯正は大変で抜歯矯正になることが多いです。成長を利用すると歯が動きやすく難易度が低いうちに成長を追いつくのがとても楽になります。ギリギリで始めると難易度が上がり、装置も複雑化して費用もかさんでくるので、できるだけ早いうちから始めてください。