歯の健康は、全身の健康に大きく関与します

歯と健康

皆様、お元気ですか?いよいよ4月に入りました。
新生活がはじまりましたね。うちの息子も大学生活へと旅立ちました。わくわくするようなことを私たちも始めたいですね。

さて、何をするにも健康であることが欠かせません。

特に歯が痛いと大変ですね。食事もできないし、痛さに耐えることも困難です。
さらに歯失うと食べられなくなるだけでなく、健康寿命にも大きく影響が出てしまいます。

健康寿命とは寝たきりにならない期間のことをさすことはお話ししましたね。

このように歯の健康は、全身の健康に大きく関与します。
歯の健康を守るためにはどうしたら良いのでしょうか。

前々回にどうしたら歯を守れるかのお話をして、虫歯のことは触れました。
ほかに何があるでしょうか。

 

次に重要な第2の要因は歯周病です。

これは成人してからだんだん影響が出てきます。
まれに若年性歯周炎で早期に重度の歯周病を発症して歯を失う人がおりますが、一般的に年を重ねるごとに歯周病が進行して歯を失っていきます。

ここで最近の報告ですが、歯が痛いというトラブルが増えています。でも虫歯ではありません。一体どうしたのでしょう。

それは噛みしめです。このような方は普段から強く噛みしめる傾向があります。
噛んでくださいと支持すると問題のない方は小気味よい軽快なリズミカルな感じで程よい音を出して噛みますが、噛みしめの傾向のある方は、噛むとズシンとハンマーを振り下ろしたような非常に重たい負荷をかけて噛んでいます。

普通に噛んで食事するにはここまで強い力はいりませんが、強い力で噛むことが習慣化されているのではと感じてしまいます。
さらに普段から歯と歯を接触して生活しているのではと思います。
このような方は普段から緊張して力が入ってるんじゃないかと推察されます。

お口の中を観察して見てください。
歯の周りの骨が出っ張っていませんか?頬っぺたの粘膜や、舌に歯型がついていませんか?

観察されたら要注意です。歯の寿命に関わるからです。

 

さて、話を元に戻しましょう。
歯周病は成人以降最も歯を失う原因と言われています。
歯周病は症状がなく進行していきます。そのため「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれています。

病状が進行して自覚症状が出始めた時にはすでに重症化して取り返しがつかないことが多く、その時点で歯科医院を受診しても骨支持がすでになく、抜歯となってしまうケースが多々あります。

 

そのため、定期検診が非常に重要です。
レントゲンを撮ったり、歯周病検査(歯と歯茎の境目の歯肉溝、いわゆる歯周ポケットの深さを測ること)で歯周病にかかっていること、病状の進行度がわかります。

では、ご自分で歯周病にかかっていることを知ることはできるでしょうか。

まず、歯茎の出血に注目してみましょう。
歯ブラシをした際に歯茎から血が出る部位は無いでしょうか?

歯ブラシに血がついていたり、うがいして吐き出したら血が混ざることはありませんか?あれば要注意です。

歯周病は最初に歯茎の炎症である歯肉炎から始まります。
この好発部位は歯と歯の境目の歯茎である歯間乳頭です。

歯肉に炎症が起きると歯茎が赤くなり、膨らんできて歯ブラシを当てると容易に出血します。この状況が歯周病の始まりです。この時期に歯周病に気が付いて対策を打って改善しておけば、歯周病の進行は止まり、歯周組織はまだ破壊されていないので、歯周病は完治して元通りになります。

病状は歯茎の出血だけで痛くもありませんのでこの時点で歯科を受診される方は少ないでしょう。虫歯を気にされる方は多いのですが、虫歯は早期に痛みや歯が欠けたりして気づかなかったり放置することはあまり無く、治療も虫歯を取って人工物に置き換えることで一応完治できます。

歯周病は歯周組織が侵されて失われると回復が難しく、人工物との替えが効きません。気づきにくいのと、病状がかなり進まないと噛むのに困ったり痛くもならないので気づいても放置されやすいのが特徴です。

 

やはり定期検診が重要です。
定期的な受診とメンテナンスが欠かせないと思います。

歯茎の軽度の腫れと出血が特徴の歯肉炎を放置していると、次に歯周組織の破壊を伴う歯周炎に移行してしまいます。
ここから先は病状が進行すればするほど歯周組織が破壊されて歯を支える歯槽骨が吸収していきます。

歯槽骨の一部だけ吸収している場合は治療により再生されることがありますが、全体が吸収している場合は再生は困難です。

治療も直接見えないところの歯石などの汚染物質を取り除いていくので、術者の熟練が必要です。

ここでうまくいっても、歯周病は成人病なので、しっかり管理できないと再発してしまいます。

 

管理とはしっかりと歯ブラシ等で歯の汚れをいつも取り除いていくことです。目安はプラークスコア20%以下です。
一本の歯を4面または6面に分割して汚れを染めだして、汚れがついている面の数を数えて、その総数が歯面全体の総数の20%以下にするということです。磨き方を慣れないと難しいですね。しかし、3か月ごとに検診を受けるとすると90日の内の89日は自分で歯ブラシを管理しなければなりません。

以前のブログでも触れましたが、歯周病は細菌の感染症なのでしっかり歯ブラシで管理できないと歯周病菌が増殖してしまいます。
歯周病菌が増殖すると歯茎が炎症を起こして歯茎からの出血が始まります。

 

歯周病菌の好物は何でしょうか?

それは人の血です。歯周病菌は歯肉からの出血による血から栄養をもらいどんどん増殖していきます。
そしてさらに出血しやすくなり、さらに歯周病菌が増えるという悪循環になります。なので、普段からの歯の汚れの管理=プラークコントロールが重要です。

実際これはかなり大変なので、前にも触れましたが、歯周内科がお勧めです!治療や管理が楽で、歯周病菌の確実な除菌ができます。

以上、歯を失う2大疾患を解説いたしました。

あとは頻度はあまり高くありませんが、こちらも治療不能や経過不良となると抜歯になってしまいます。

 

第3の要因として、根尖性歯周炎があります。

歯周病は正確には辺縁性歯周炎と言います。
これに対し根尖性歯周炎は歯の根の先端の炎症です。歯の神経が死んでしまうと侵入した細菌がそれを食べてどんどん繁殖します。そして根の先端に細菌が到達して歯と骨の間に侵入して炎症を起こします。

炎症の場所が硬くて狭い歯と骨の間で起こりますからここにだんだん膿がたまり内圧が高くなって激痛になります。
虫歯と違ってすぐに痛みを取ることはできません。薬で細菌を抑えて、たまった膿が外に出たり、炎症が落ちつかないと痛みがおさまってこないので強力な鎮痛剤で痛みを抑えます。

ただし、ここまで悪化させると完治せず結局は抜歯になってしまうこともあります。
しかも根管治療の成功率は100%でなく、しっかり治療しても経過が悪く再治療になるケースはたくさんあります。外国ではそのようなリスクを避けて治療せず抜歯してインプラントを入れるケースが一般的です。つぎに述べる歯の破折の原因ともなるので、歯の神経を取る治療にならないようしっかりと虫歯を予防管理することが重要です。

 

第4の要因はブラキシズムや噛み癖に代表される歯への荷重過多(オーバーロード)です。
ブラキシズムは様々な要因から引き起こされますが夜間無意識のうちに歯に通常の何倍もの非常に強い力がかかって歯を割ったり、咬合性外傷として歯周病の急速な進行に影響し、あっという間に骨がなくなってしまうことがあります。噛み癖も長期的に歯を痛める原因となるので必要以上に強くかまないようにしましょう。

最後に外傷です。

けんかや事故、転倒などで歯を失うことがあります。
成人では交通事故のケースが多いのではないでしょうか。お年寄りは転倒する危険性が高く、転ぶときに手も出ずに顔から打ち付けることもありとても危険です。

以上歯を失う原因について触れました。それぞれの要因のリスク管理が重要です。
定期検診を受け続けると明らかな差が出てきます。一生自分の歯で噛むために定期検診を受けましょう!

年齢別残っている歯の本数のグラフ