日本床矯正研究会北海道・東北支部主催 床矯正フォーラム札幌

皆様、少しご無沙汰です。この前の日曜日に日本床矯正研究会北海道・東北支部主催の床矯正フォーラム札幌という勉強会を開催しましたのでその準備のためブログの更新が遅れました。北海道~東北の開業している歯科医院の先生方やその勤務しているスタッフがお集まりになり3人の先生方が床矯正の症例を発表してディスカッションして理解と親睦を深める会です。年1回札幌又は仙台で開催されることになっております。

今年も私が症例発表の演者として参加し、症例を発表して皆さんと勉強して参りました。

私は北大を卒業後5年間医局に残り(歯科保存学第二講座)、その後4年間勤務医として働いた後、2001年に札幌の西区琴似のJR札幌駅近くの歯科医院を居抜きで継承しました。
フォーラムでも話したのですが、開業当初はとても苦労しました。継承前の先生も矯正をしていて、子供がとても多いクリニックだったのですが、私が当初矯正ができず、子供の扱いも苦手だったので、クリニックへやってくる子供が激減しました。
しかし、タイミングよく私にも長男が授かり、小さな子供にも慣れていくことができました。
ただし、当初から子供が少ない状態だったので、床矯正の対象者としては遅すぎる中学生が多かったですね。このころだと犬歯がすでに生えてしまっているのと、上下左右のEという最後まで残る第二乳臼歯以外すべて永久歯に生え変わっていて手を出すのが難しく、悔しい思いをしていました。当時は床矯正1本で、それで対応できないブラケット矯正、いわゆる固定式のワイヤー矯正が必要な症例に対応できませんでした。
それでも、反対咬合の小学生で上あごの前方拡大で治療を成功することができ、床矯正がとても子供にとって有効な治療法だと確信することが出来ました。
床矯正の利点はしっかり装着してネジを巻き歯槽骨に力を加えていくと確実に歯列が広がっていきます。取り外しできるので便利なのですが、その反面しっかり装着時間を守り決められたペースでネジを巻いていかないと治療がまったく進まなくなります。そのため、当初は確実に治療を進めるため毎週患者を呼んでこちらでネジを巻いていたこともありました。
そのため、初めのころは矯正治療にとても時間がかかってしまいました。
床矯正を始めてしばらくして、岡山大学の岡崎先生や東京で床矯正研究会を立ち上げた鈴木設矢先生に床矯正の指導を受けながら症例を増やしていきました。
いろんな症例をこなしていくと、治療に時間がかかり、犬歯が生えるまでに前歯がそろわなかったり、反抗期になり床装置を入れてくれなくなった子や、犬歯・小臼歯が位置がずれて生えてきたなどワイヤー矯正がどうしても必要になってきます。これを習得してからは治療の幅が大変広がりました。床矯正とワイヤー矯正の併用の相性は実は良いのです。
床装置は2次元的な動き、つまり拡大や横に動かしていくのが得意です。それに対しワイヤー矯正は歯列を縮小したり、形状記憶のアーチワイヤーの力で歯を立体的にきれいに並べるのが得意です。逆に歯列を拡大することが苦手です。
ワイヤーを単独で用いて矯正しようとすると動き出すまでがなかなか大変です。固い骨に歯が囲まれてなかなか動けず、最初は痛いことが多いです。
しかし、先に床装置をつけてネジを巻き床矯正から矯正を始めると歯の周りの固い骨(歯槽硬板)が一度分解し歯が動き出します。そうして固い歯槽硬板を壊してからワイヤー矯正に移行すると、痛くなく、とってもスムーズに早く歯が動いて正しい位置に並んでくれます。
これを併用してから、拡大後に早く歯を並べたい症例など使い分けることで非常に効率よく歯を並べていくことができるようになりました。
ただし治療費がかさむのと、強制的に歯を動かす要素が大きいので、ワイヤーをはずしてからの後戻りの可能性が大きいので、その後歯の保定のための閉鎖型装置をしばらく入れておかなければなりません。
このように矯正開始年齢が9歳を超えてしまうと治療が簡単にいかなくなり、治療費がかさんだり、治療の複雑さ、治療期間の長期化につながってしまい、患者さんだけでなく治療を提供するこちら側も大変になってしまいます。
そのためできるだけ早くから気が付いて歯並びの検診、相談に来てくれるよう、患者さんに働きかけてきました。まず、患者さんの兄弟、その友達とだんだん輪を広げて床矯正という治療法を知ってもらうこと。早期に治療することで簡単に治ること。矯正はいつから始めても同じでなく、様子を見てはいけないこと、気になったときにすぐ相談して適切な対応をしてもらうことが必要ということを繰り返し伝えていきました。
われわれ日本床矯正研究会がスローガンとして掲げる”床矯正を文化に!”を実践していきました。少しずつ矯正患者の年齢が低下していきましたが、それでも足りないので、区の乳幼児健診に参加したり、学校医となり歯の検診を担当したり、ホームページの内容を充実させて歯科医院の存在と取り組んでいることをアピールしてきました。
その結果として現在は乳幼児から来てもらえる歯科医院に変わりました。
まだまだ、乳幼児や学童をもつお母さんは、虫歯のことに関してとても気にされる方が多く、それに比較して歯並びの問題に関しては虫歯ほど危機感を持っていないようです。
虫歯は非常に少なくなっております。昔は平均して何本もの虫歯を認めたのですが、ここ最近は1本も割り込んだのではないでしょうか。乳幼児健診で虫歯を見つけることは非常にまれになってきています。それに対して歯並びの問題に関しては年々深刻になってきています。

乳幼児健診を3ヶ月に一度担当して50人ほど検診しますが必ず反対咬合が疑われる子を見つけます。このころの反対咬合はあごの位置の問題で歯の位置のせいではありません。歯列も歯の隙間ができている状態が好ましいのですが、きつきつに並んでいたり、すでにがたがたの叢生を発症している子は珍しくなく、必ず何人も見かけます。そのことに気づいていない保護者や気づいていても虫歯ほど危機感をもっていない保護者が多いです。

食事の仕方など指導しておりますが、私一人の頑張りでは足りず、周りの歯科医師の子供の歯並びに関する知識や指導力が問われ、それをしっかりと学び、身に付ける機会が初めに触れた日本床矯正研究会の地区フォーラムです。札幌だけでなく、全国6地区(北海道・東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州)に別れそれぞれ毎年開催されております。

もしかかりつけの先生で小児の歯並びに対してしっかりと説明や対応が足りないようでしたら、札幌でほぼ毎年6月に開催するので、教えてあげてください。皆子供の歯並びをなんとかしようと頑張っている同志の先生です。本当に歯科医師にも、子供を持つ保護者の方にもこの考え方が浸透してほしいものです。矯正はいつから始めても同じではありません。特に成長している真っ只中の子供は出来るだけ早い対応が求められます。子供の成長力を利用して矯正ができるからです。歯を並べるにはスペースが必要です。成長が止まった大人ではほぼ引き算しかありません。そのため歯を削ったり、歯を抜いてスペースを作ることになりますが、成長中の子供では引き算ではなく拡大によるスペースの足し算が可能です。骨の量が足りなければ成長で補うことが出来ますので状況が全く違うのです。

今、中学校の歯科検診をしていますが、虫歯は少なく、虫歯を発症して治療が必要な子は10人に一人くらいです。ただその子のほとんどが歯並びが悪く、その影響で虫歯を発症していると思われました。悪いのは虫歯でなくて歯並びなのだということを実感しています。
ぜひこの情報を共有してブログを読まれている方に拡散をお願いしたいと思います。