認知症と口腔機能

札幌市西区山の手の歯医者「シリウス山の手歯科」院長の島貫です。

皆様お元気ですか。コロナは未だ猛威を振るっています。身近に家族全員がコロナにかかってしまった患者さんがいて、ワクチンの接種は受けていたそうです。

もう誰がいつかかってもおかしくありませんね。口腔内を清潔にしておくと罹患率が下がるので、ホームケアあるいは歯科医院を受診されて口腔内の清掃に注力されることお勧めします。

さて、このブログを書いている本日コロナ禍でオンラインでの開催ですが、歯科医師会のセミナーに参加して皆様にお伝えしたい興味深い内容がありましたのでお知らせします。

認知症の基礎知識

皆様、認知症についてどのくらい知識がございますか?

2012年度ですでに高齢者の4人に一人が認知症またはその予備軍となり、(予備軍とは軽度認知障害のことで正常と認知症の中間の状態、年間10~30%が認知症に進行するが回復する場合もある)年々増加しております。特に80歳以上で急速に増加し、女性の方が有病率が高くなる特徴があり、昔は平均寿命が70歳以下だったので稀な病気でした。

認知症の原因

認知症の原因は大きく分けて4つあります。

そのうち脳血管性認知症、アルツハイマー病の2つで全体の75%になります。

脳血管認知症は脳梗塞や脳出血で脳がダメージを受けることで起きます。ダメージの深刻さで障害が決まり、新たに脳血管の発作を起こさなければ病状は進行しません。

アルツハイマー病はβアミロイドが脳の神経細胞の周りに蓄積し、その後タウたんぱく質が神経細胞内に置き換わって細胞が死滅して機能障害を起こします。これは進行し続けます。

糖尿病はインスリンを増加させ、これを分解する酵素はβアミロイドも分解してくれるのですが、インスリンの分解で手いっぱいになりβアミロイドが蓄積しやすくなりアルツハイマー病のリスクが上がります。糖尿病は危険です。

さらに歯周病も深く関係していて歯周病の悪性菌の一つpg菌は脳内に侵入してβアミロイドの産生・蓄積を加速させます。歯を失うことも併せて歯周病は非常に危険です。

認知症を予防するためには

では、認知症にならないためにはどうすれば良いのでしょうか。

今まではアルツハイマー病に関して薬は進行を遅らせたり症状を緩和する対症療法しかなかったのですが、原因療法としてβアミロイドの沈着を防ぐ薬が認可される見込みですので早期治療として期待されます。

運動もしましょう。例えばウォーキングすると脳の血流が10倍に増え脳を活性化させ認知症の予防効果があります。

また、認知症予防に良い食べ物(牛乳、青魚、緑黄色野菜、大豆・納豆など)を多くとり、動物性の油、マーガリンを控える食生活も重要です。

認知症と口腔機能の関係性

そして私たち歯科医師が携わることなのですが、実は口腔機能の状態が認知症の発症に一番深くかかわっております。もちろん歯周病の治療、予防も重要です。

歯の数、義歯の使用と認知症発症の関係で65歳以上の健常者に4年間追跡してどうなったかをみた資料があります。

加齢とともに健常者は認知症を発症していきますが、20本以上歯が残っている人と歯がほとんど無く義歯を使用している人に差は無かったのですが歯がほとんど無く義歯を使用していない人は発症するリスクが1.85倍に上昇しておりました。

口腔機能の状態が転倒事故に関係する?

また、北海道は冬道が危険ですよね。特に高齢者が転倒してしまうと大きなけがを負い、大腿部の骨折ともなれば寝たきりになり認知症を進行させてしまいますで、非常に大きなリスクです。

冬道でなくとも転倒は高齢者にはつきものです。ただし口の中の状況で大きな差が出ます。

ある研究で高齢者で年2回以上転倒する人の割合は歯がなく入れ歯も使用しない又はかみ合うところがない人が70%を占めていました。逆に年に1回以下の転倒する人は自分ので食べている又は入れ歯を使っている人の割合が80%を占めていました。年2回以上転倒する入れ歯を入れていない人に入れ歯治療をして1年経過観察したところ、ほとんどの人で転倒回数が少なくなるか、転ばなくなる改善が認められました。いかに歯科治療が重要かがわかります。

まとめ

歯科界では以前より80歳で歯を20本残そうという8020運動をして大きな成果をあげてきました。ただし高齢化が進むと治療困難な歯となり寝たきりや認知症では危険な歯となってしまうこともよくあります。これからはしっかり噛める歯と入れ歯で20本以上噛めるところを守ることが重要になっていきます。

次回もう一つの高齢者にとって重要な話題、オーラルフレイルについてお話しします。