子どもと妊婦の歯科定期検診について

虫歯推移の図

皆様、お元気ですか

最近は天気が不安定ですね。大雨や地震など自然災害には備えたほうが良いですね。

前回は定期検診についてお話しました。

虫歯の発生や、歯周病の進行や発症の防止、補綴物の維持管理、口臭の発生防止、ホワイトニングの維持などに定期検診は欠かせません。しかし、いずれご高齢になって通院が困難になる時が訪れます。その時はどうすればいいのでしょう?

ご安心ください。訪問診療というシステムがございます。しばらく前から診療報酬の改訂の度に手厚くされてきております。厚生労働省も、これからは歯科医院に患者が行くだけでなく、歯科医院側も在宅医療に参加していかなければならないと明確にビジョンを示しております。

在宅医療バージョンアップしました。(新しい機械かれんEZの導入)

かれんEZ

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当院も以前から在宅医療を進めてまいりました。

しかしながら道具がポータブルの電気エンジンを中心としたものなので、診療室のように歯を削って虫歯を取って詰めたり、冠の形成をして歯型を採り、冠を被せるような治療は困難で入れ歯の製作や、修理、調整の診療が中心でした。

この度、新しい訪問歯科用のポータブルユニットを購入いたしました。電気エンジンは従来の技工用のストレートタイプのハンドピースだけでなく、口腔内用のコントラアングルのハンドピースと、高速切削用の5倍速のコントラアングルハンドピース対応となり口腔内の使用が可能になりました。これにより、診療室と同じような治療が可能となりました。口腔内にたまった水を吸引するポータブル口腔バキュームと汚れを吹き飛ばしたり、洗浄または乾燥させる水とエアーを出すポータブル口腔シリンジも付属しております。

それともう一つ、定期検診のケアには欠かせないポータブルの超音波スケーラーも付属しております。これにより、効率的な歯石除去や清掃が可能になりました。従って入れ歯の製作や修理、調整だけでなく在宅における虫歯の治療や定期検診を診療室と変わらず行うことが可能となりました。

訪問日と時間の調整が必要ですが、是非遠慮なく訪問診療をお申し付けください。よろしくお願いします。

小児の定期検診

さて、逆に成人になる前の定期検診についてもお話ししましょう。成人以降は現状を維持すること、アンチエイジングの対策をして老化による影響を抑えることが目的になりますが、子供は違います。

小児はまず、虫歯の発生を予防してできるだけ遅らせることが一番の目的でありました。虫歯や、清掃状態のチェックをして早期にフッ素を塗っていくのが小児の定期検診の王道でしたが、虫歯はここ30年で激減して、現在は1本見つかるかどうか位に虫歯は激減しております。虫歯推移の図

出典:う蝕罹患の現状

砂糖の摂取の改善や、感染しないことへの教育、フッ素塗布の徹底などの取り組みが効果をあげてきたのでしょう。

しかし、ここにきて新たな問題が生じています。

以前のブログでも取り上げましたが、昔の子供は虫歯の洪水で虫歯で歯が変色したり、崩れて歯冠がなくなった状態いわゆる”みそっぱ”の状態の子が当たり前で、雑誌の表紙にもそのような歯をした子供が堂々と掲載されておりました。

しかし、虫歯はひどいのですが、歯並びは決して悪くなかったのです。昔の子供は乳歯の間の隙間が十分ありましたので、”すきっぱ”でもあり、永久歯への歯の交換が容易でした。虫歯さえ永久歯にうつらなければきれいな歯並びの歯ができあがりやすかったのです。

それが虫歯は改善してきたのですが、歯並びに対してはまず、水平的な歯の隙間が足りなくなり前歯が重なりだし叢生という歯列不正が見られ、次に上下の空間が狭くなり過蓋咬合という下の歯が上の歯に隠されてみえなくなる歯並びが、現在では下顎が後ろに下がって前後的に口の中が狭くなる下顎後退という現象がみられ、下顎が下がるので上の前歯が出て出っ歯に見えます。ここまでくると口の中が狭いので舌の置き場がなくなり呼吸が苦しくなり口を常に開いたり、気道を広くするために顔が上を向いた姿勢になり、顔の形が悪くなります。このような口腔内や顔の形にかかわるような発達不全を引き起こし、虫歯以上の問題を生じてきています。

虫歯はそもそも感染症なので予防としては早期に感染させないように注意して、口腔の環境を良くして、予防処置としてフッ素を塗る対策でいいのですが、歯並びの対策は予防ではなくて基本的には口腔機能の獲得と口腔の成長となります。口腔に負荷をかけて上顎骨を成長させるのが始まりで、これは母親の母乳による哺乳やしっかりした硬さの哺乳瓶を使った哺乳で獲得できます。それからは食事の正しい与え方で口唇の使い方、舌の使い方、咀嚼の仕方、飲み込み方などを正しく獲得していくと歯が正しく並ぶ環境が整います。

これを理解されて子育てができると口腔の正しい発達だけでなく、心身の発達にも役に立ちます。

しかし、子育てが実際に始まるとほかにやることがたくさんあって、なかなか落ち着いて話を聞いたり、新しいことを始めるのがなかなか難しいかと思います。

でも、妊娠中であれば十分に時間が取れるのではないでしょうか。妊娠されている方は妊娠中に1~2回は歯科検診にいらっしゃるのでその機会に妊婦検診として歯科の領域で妊娠中の注意点や、出産後の子育ての知識をお伝えできるのが一番よろしいのかと考えております。

妊婦検診について

妊婦検診で伝える内容は、私がセミナーを受けて勉強したことをお伝えするつもりです。

その内容は

①妊娠中の母親の食事について
②歯周病が早産・低体重児の リスクを高めることについて
③哺乳の大切さについて
④離乳食の始め方について

です。

それぞれの項目を今回は簡単に触れておきましょう。

①妊娠中の母親の食事について

母親が食べたものでおなかの赤ちゃんが成長します。母親の食べ物がそのまま胎児に届き、母親が摂取した 化学物質も 胎児に蓄積します。

そのため、妊娠中に母親が摂取してはいけない食べ物は

①農薬や化学肥料を使用した農作物
②食品添加物(化学物質)
③コンビニ弁当やファストフード

などが挙げられます。

農薬や化学肥料を使用した農作物ですが、一般的に売られている野菜はこちらが多いと思われます。値段が高くなりますが有機野菜や健康食品として売られているものが安心でしょう。

次の食品添加物(化学物質)ですが、なかでも砂糖は注意が必要です。脳の快楽報酬系(甘味、覚せい剤、ギャンブル)ドーパミンを放出して快楽を得たり、産後うつの原因になったりします。

また、加工肉に含まれる亜硝酸ナトリウムやパンやマーガリンに含まれるトランス脂肪酸も注意が必要です。

また、コンビニ弁当やファストフードは名古屋市立大学の研究報告により死産との関連性が確認されています。これは電子レンジを使用することで食品添加物が変質するのではと推察されます。

②歯周病が早産・低体重児の リスクを高めることについて

これは、歯周病にかかっていない人と比べて7倍も高いことがわかっています。

これはあまり知られていないようなのですが、かなりのリスクなので特に中程度以上の歯周病にかかっている方はしっかりと治療しておきましょう。

③哺乳の大切さについて

アメリカ合衆国 公式WEBサイトより、母乳育児の疫学で、母乳育児の効果は生涯にわたる影響として小児感染症や不正咬合に対する予防効果、知能の向上、過体重や糖尿病の現象の可能性が示されております。

母乳育児介入試験(ベラルーシ共和国)の結果では、母乳育児と胃腸管感染症のリスクの減少 そして生後1 年のアトピー性湿疹の減少が追跡調査で明らかになっています

④離乳食の始め方について

離乳食は以下の4つの段階に分けます

①離乳初期(5~6か月)
②離乳中期(7~8か月)
③離乳後期(9~11か月)
④離乳完了期(12~18か月)

それぞれの時期に応じて、食べ方の目安と 調理形態・食品・摂取機能について説明するのですが、まず覚えておいてほしいのが離乳食を上唇を使って捕食する習慣づけです。決して食べ物をこちらから口の中に入れないでかぶりついてもらうようにすると、いわゆる前歯がぶりの基礎ができます。

簡単にふれましたが、いずれ歯科がかかわる保育・育児についてくわしく特集したいと思いますのでお待ちください。