日本床矯正研究会第3回全国大会

皆様お元気ですか?先日区の乳幼児健診に行ってきましたが寒暖の差が大きいせいか鼻水を出していた乳幼児がいっぱいおりました。体調管理には注意してくださいね。

 

さて、先日ミラクルデンチャーの講習に大阪へ行ったのに引き続き、今度は私の所属する日本床矯正研究会第3回全国大会開催のために東京へ行ってきました。

会場は一橋大学の一橋講堂で行われました。

講演者は東京医科歯科大学の小野 卓史教授、デンタルフォレストなかむら歯科の看護師で歯科衛生士でもある中村 亜美先生、日本床矯正研究会理事長の花田 真也先生のご三方でした。

 

小野先生は「咬むことと鼻で息をすることが子供の成長発育にどのような影響をもたらすか」というテーマでよく噛むことが骨細胞を活性化させて骨の成長を促すことがご自身の研究で証明されたということ、また、歯がほとんどなく入れ歯を使っていない人は歯が20本以上ある人と比べて認知症の発症率が2倍以上あるということが4年間の調査で明らかになったそうです。

しかし、歯がなくても入れ歯を入れて咬むことでその発症リスクを大きく抑えられるそうです。また、咬むことの刺激の低下は記憶力や口を閉じる筋肉の成長や下あごの成長も抑制することも確かめられたそうです。

もう一つのテーマである呼吸が成長発育にどういった影響を与えるかについてですが、まず全国調査で全体のやく30%およそ子供3人に一人が口唇の閉鎖不全を起こしている事がわかったそうです。アトピー性皮膚炎にも深い関係があるそうです。

口呼吸は鼻の役割(呼吸するときの空気の通り道、空気の浄化、空気の加湿・加温、匂いを感じる、細菌や有害物質の除去フィルター)を迂回してしまい鼻の機能が失われてしまいます。

また、口呼吸は歯並びやかみ合わせ、虫歯、歯肉炎に影響を与え、出っ歯になりやすい、前歯をぶつけやすい、虫歯や歯肉炎の原因になる、口臭の原因になる、口の筋肉の活動に影響する(口を開けるために閉じる筋肉が委縮する)など様々な影響を与えることが統計や実験で証明されています。

また、鼻が詰まる動物実験を行うと血中の酸素が不足して骨吸収を起こし、骨の成長を抑制することがわかりました。

また上顎骨の成長は下顎より早く終わるので口呼吸を早く直さないと上顎骨の成長の回復が見込めないそうです。

子供の成長にとって鼻呼吸の障害は早く取り除かなければならないようです。まとめますと、咬むことと鼻で息をすることが子供の成長発育に非常に大きな影響を与えるということでした。

 

2人目の中村 亜美先生からは「乳児からの口腔機能発達支援教室の実践」のテーマで自院での取り組みを紹介され、小児歯科を専門に行い、自院内でお口育て教室を開催して乳幼児からの口腔機能発達支援、特に3歳までに口腔機能の土台が作られるので口腔機能をたくさん使う経験をさせて、早くに発育のピークを迎える(上顎は10歳までに発育が完成し成長が止まってしまいます)上顎の成長を支援する取り組みが紹介されました。

保育園や学校における食べ物をのどに詰まらせる誤嚥事故、ローソクの火を吹き消すことができないなどお口の機能の発育不全による機能の低下が原因の事例を示され、自院で乳幼児教室をひらいて何とかお口の機能を育てるやり方を実際に伝えて、お家でもできるようにする取り組みを8年前からされているそうです。

内容はお口遊び、足育と姿勢、食育で大事なのは楽しみながら実践するということでした。

内容を少し紹介すると手作りのおもちゃを作って口で吹いたりして遊ぶ。お子さんのファーストシューズ選びが重要でかかとがしっかりしたものを選ぶ(アシックスのすくすくさんお勧めです)。足形を採ってそれを利用して絵を書いて遊ぶ。はだしで遊ぶことも重要性を教える。またハイハイ運動をするとベロが上あごにくっつくので有効なのでトンネルを作ってハイハイでくぐらせて遊ぶ。食事は足がぶらぶらしないようにしっかりと足が接地させることが重要なことを伝え姿勢をよくする。

また興味深かったのはパンは発育に害があるということでした。お米と違っていくら咬んでもパンはすりつぶすことができないので唾液が出ずらく丸呑みしてしまうのに対し、お米は唾液がいっぱい出て正しい嚥下ができるそうです。義歯が割れる、詰め物が欠けるといったトラブルもパンをかじっているときに起こりやすいそうです。

そのような経験はございませんか?なるべく和食にしたほうがいいようですね。

お口のトレーニングを通じてお口ポカンの子供を減らしていく取り組みのご紹介でとっても参考になりました。

 

最後に私たち床矯正研究会の前理事長で現監事でおられる福岡で開業されている花田真也先生の講演でした。

花田先生は「一生涯の口腔機能を支える歯科を目指して」というテーマで講演され、今回開業してからの自身のエピソードを交えて講演されました。

歯科医院として目指す方向も一緒で、花田先生は私と同じころに開業なさったこともありとても親しみを持ち、私の目標でもあります。

開業当初はかなり順調にスタートされたようですが、直後に過労からおたふくかぜにかかったり、スタッフとうまくいかず総入れ替えとなったりと私と同じような苦労を経験をされ、しっかりと立ち直りその後の歯科医院の発展には目を見張るものがあります。

床矯正に興味を持ち、日本においてその分野の第一人者である鈴木設矢先生のもとに飛び込み、学んで現在はその後継者として活躍されています。

わたしも途中から床矯正研究会に興味を持ち入会していたのですが、なかなか難解で困っていたところ花田先生が講師となられ床矯正をとても系統立ててわかりやすくしてくださいました。これを機に当医院での床矯正の症例が飛躍的に伸びました。

縁あっておかげさまで日本床矯正研究会設立の際お声をかけていただき北海道・東北地区の評議員に就任して「床矯正を文化に」という日本床矯正研究会のスローガンのもと床矯正を地域に広げる活動をさせていただいております。

 

花田先生は博多近郊の大野城駅隣接のマンションの1Fのテナントの一角に開業してからテナントの空きを利用してクリニックを大きくしていき、「歯科矯正治療が必要な子を減らしたい}という思いから9年前に自院に隣接した保育園キッズガーデン・ル・ダンテを設立して普段は歯科医院を訪れることのない乳幼児を観察することができ、どうして歯列不正が発症するのかを母親の育児を通じて解明していき、保育園を運営して子供の保育にかかわり、食育、運動、遊びを通じて、乳幼児の口腔機能の育成にかかわり上記の歯科矯正を必要とする子供を減らしていくということを実践されています。

矯正治療は以前はメカニカル(機械の力で治す)ことが中心で、そのため矯正のスペースを作るために歯を平気で抜いていました。歯列育成という概念すらなく、これ以上歯並びが悪くならないところまで引っ張ってから治療を開始するのが当たり前でした。訴訟社会のアメリカを習っていたからです。

歯科も6年前から口腔機能発達不全症という病名が新設され子供の口腔機能を正しく成長させるという概念が導入されました。これは画期的なことです。悪くなってから治療するのではなく、未然に防いでいこうという流れができたのです。

本来歯並びは日本床矯正研究会が提唱するバイオファンクショナルセラピーという口腔の周りの筋肉や舌の力や機能を育てることで自然に正しく並んでいき、矯正装置による歯並びの治療は補助的なものに過ぎないということを是非ご理解いただき周りの方に伝えていただければと存じます。

 

日本床矯正研究会ではこの考えを地域に伝えていき、その柱となる床矯正を文化にする活動をしていきますのでよろしくお願いします。