子どもの口腔機能

皆さま、いよいよ秋ですね。美味しいものをいっぱい食べて元気に過ごしましょう!

 

さて、今回も前回の内容の続きです。

食べる機能が備わり、しっかり口を使って食べるとやがて脂肪が筋肉に置き換わり、表情筋や咬筋が発達して赤ちゃんからお兄ちゃん、お姉ちゃん顔になります。

口の機能は唇の形態、上口唇の食べ物の捕捉テスト、ローソクの吹き消しテスト、吹き戻し(お祭りで打っているピーヒョロヒョロと息を吐くと先っぽが伸び縮みするおもちゃです)テストなどで調べることができるので興味のある方はやってみてください。

ちなみに唇の形態とは、上下全体の唇の幅の縦の直径を横の直径で割ったもので、1/2、1/3、1/4の比に分類し、一般的に年齢が上がるにつれ唇の形が1/4の比に近づき、上口唇で食べ物を捉えるのが上手になるので、形で判断することができます。

 

今度は、時代による代表的な乳歯の状態や歯列についてお話しします。

現在のお子さんと50年位前の子供と比較して違いがあると思いますか?

今の子は虫歯に関して言うと、虫歯を見つけることが難しくなってきました。昔は虫歯の洪水でした。虫歯が広範囲にできて、歯が崩壊して茶色の虫歯の歯だらけになっているいわゆるミソッ歯の状態です。決して珍しくなく当時の雑誌の表紙を飾るお子さんでさえ、虫歯で前歯がない状態で堂々と掲載されています。

当時は歯医者も少なく、虫歯予防という概念も浸透せず、砂糖まみれで虫歯ができやすい飲み物や食べ物が蔓延していました。

それから約10年位の区切りで一般的な虫歯の状況が変わってきています

 

  • TYPEA(1975年ころ)上顎前歯が残根の状態
  • TYPEB(1985年ころ)前歯の隣接面の虫歯、臼歯部の咬合面の虫歯あり(人工乳、砂糖の影響)
  • TYPEC(1995年ころ)第二乳臼歯の咬合面のみの虫歯あり(3歳までの虫歯がなくなる)
  • TYPED(2005年ころ)臼歯の隣接面の虫歯あり(第二乳臼歯の咬合面の虫歯が無くなる)
  • TYPEE(2015年ころ)カリエスフリー(虫歯なし)

 

このように乳歯の乳歯はできやすい場所が変化し、だんだんなくなってきました。

しかし、問題は虫歯だけではなかったのです。

数年前より口腔機能発達不全症という病名が新設され、保険診療ができるようになりました。

虫歯治療が中心の時代ではこのような問題が起きると想像できませんでした。

今までのお話は口腔機能を正しく獲得していくことの重要性を述べてきました。口腔機能を正しく獲得できないと、口腔機能発達不全症となり、主に歯並びに影響を与えるようになります。

 

今度は乳歯の歯並びの変遷についてお話ししましょう。

これも10年ごとに変化していきました。第1世代~第4世代まで分類します。

 

小児の歯列弓の変化

第一世代(1970,80年代)空隙歯列弓

当時大多数の子供の歯列弓にはいっぱい隙間がありました。

 

第二世代(1980,90年代)閉鎖型歯列弓

歯列が縮小してきて空隙がだんだん見られなくなってきました。

 

第3世代(2000年代)過蓋咬合

下の前歯が内側に倒れてきて、上下の空間が狭くなってきました。前歯の重なりも見られるようになりました。

 

第4世代(2010年代)下顎後退

下顎の位置が後退して、前後的に口の中が狭くなってきました

 

歯並びの乱れは見た目のみならず、虫歯の原因、歯周病の原因、顎関節症、肩こりやさまざまな病状の原因のもととなります。口腔の機能が治らないまま、矯正で治療してもまた再発する事にもなるので、幼少期からの口腔機能の獲得は非常に重要です。

 

次回はこの世代別に歯並びが変わってきた原因や口腔機能が与えるさまざまな影響、子供に対しこれからどのように口腔を育てていくべきかなどまとめたいと思います。