矯正治療を始める時期

札幌市西区山の手の歯医者「シリウス山の手歯科」院長の島貫です。
皆様お元気ですか?今回は矯正の話の続きです。
いつ、矯正を始めるかについてです。

 

永久歯列の完成した大人はいつ始めても同じです。矯正は歯を動かすために隙間を必要とします。もう顎の成長は終わってしまっているので拡大して隙間を広げるのには限界があります。そのため、歯を抜いて治療するのが一般的です。今はやりのマウスピース矯正は歯と歯の間を削って隙間を作り矯正します。時間をかけず簡単に治療したいのであれば歯を削り形態修正した冠をかぶせて治療する選択肢もあります。

 

では子供はどうでしょうか。
子供はあごが成長を続けているので、これを利用しない矯正はありえないと私は思います。
基本的に矯正の開始時期は気になった時(異常を認めたとき)からになります。

 

歯列不正で一番多く、気付きやすいのは前歯の叢生です。重度ですと乳歯列でも発生します。

6歳前後で一番前の歯が永久歯へと交換が始まります。その時に永久歯が正しく生えてこれる隙間が足りないと歯は曲がって生えたり、本来の位置からずれて生えたり、重なったりして叢生という歯列不正になります。叢生の場合一番重要なのは、永久歯の糸切り歯(犬歯)が生えてくる9~10歳までに治療して治すことです。
叢生は犬歯が生えてくるまでは、前歯の問題です。しかし、犬歯が生えてくるまでに治らないと犬歯も移動させなければならず、奥歯の問題に移行して難しくなってしまいます。治療する装置も複数必要で、固定式のワイヤーを使用した治療もしなければならなくなります。

 

次に上顎前突ですが、これは永久歯の前歯が生え変わってから起きた場合は、叢生と同じくできるだけ早く治療しましょう。上の2番目の前歯が後ろに下がっていることで下の前歯がぶつかって顎の位置が下がり、上の前歯が出ているように見えるケースは直ちに上の前歯のスペースを拡大して2番目の前歯を前方へ押し出す必要があります。奥噛みの癖で顎が後退する場合もありますが、放置して下あごが下がった状態で永久歯の奥歯のかみ合わせが完成してしまうとその位置で噛むことに慣れてしまい、正しい位置で噛むことが困難になります。

 

開咬も永久歯の前歯が交換してから発生する歯列不正です。前歯の上下の重なりがほとんどない、または隙間ができていれば開咬と判断できます。通常上下の前歯はお互い2mmくらい重なっています。原因は舌や口を空けていることに原因があるので、放置するとどんどん悪くなります。気が付いたら早い段階の治療が必要です。

 

矯正装置を使った治療は永久歯に生え変わってから早期に行い、糸切り歯(犬歯)が交換する前に治療を完了することが重要となります。では、それ以前にできることはあるのでしょうか。あります!永久歯に生え変わる前の乳歯の歯並びを観察してみましょう。歯が隙間なくきれいに並んでいるのと、歯と歯の間に隙間があり”すきっぱ”という状態の歯並びのどちらが理想的と思われますか?正解はすきっぱの歯並びです。なぜかというと犬歯も入れて前歯は乳歯より永久歯が幅が大きくなってます。このため隙間がないと永久歯が正しく萌出する場所が足りなくなってしまいます。そのため、歯の隙間が無い子は叢生になる確率が高くなってしまいます。歯の隙間を作るために前歯を使ってよく噛みましょう。かぶりついて食べる食材が適しています。また、舌を正しく使える訓練や、口を閉じる訓練、姿勢を正すこと、悪習癖を治すことがあげられます。これらは別の機会に詳しく話しましょう。

 

一番重要な話しです。一番怖く特に早期の治療が必要なのは下顎前突です。”受け口”とも言われ、上の前歯と下の前歯のかみ合わせが反対になって、下の前歯が上の前歯に覆いかぶさっている状態です。ひどい場合は奥歯も反対のかみ合わせになることもあります。下顎の過成長、上顎の劣成長の原因となり、骨格性の問題となりますので根本的な治療は外科手術しかありません。顔貌に大きな影響を与えるので、一生の問題となります。これは永久歯に生え変わる前から歯列不正が現れているので気が付いたら直ちに対策が必要となります。最も早くからでは一番最初の乳歯の前歯のかみ合わせから発症します。

 

ただしこれは機能の問題なので、顎を前に出す癖が改善されると治ります。放置すると乳歯の犬歯が引っかかるようになり歯列も傾いて歯性の反対咬合に移行し、永久歯の歯並びも反対咬合になり、さらに放置すると下あごが悪い方向へ成長して骨格性の反対咬合になり、顎の骨を切らなければ治せないところまで悪化します。そこまでいかなくとも治療はかなりの困難さが必要となるので、下顎前突は永久歯列に交換が始まる6歳までに治療することが重要です。早めに手を打つことで治療が容易になります。永久歯に生え変わる前ではマウスピース型の矯正装置を入れることで舌や口腔周囲筋の状態を整え顎が正しい位置で噛むようになり解決します。前歯が永久歯に交換してからも前歯のかみ合わせが反対にならないようコントロールして成長の方向を正しくしていくことが必要で、成長のスパートが終わる16歳まで管理すると安心です。この問題は重大なので是非放置しないで早めに相談してください。

 

次回は実際の矯正治療について解説いたします