入れ歯に関するあれこれ

皆様,9月も終わりとなり秋めいてきましたね。風邪をひかないように注意しましょう。

 

今回は入れ歯について解説いたします。

入れ歯は歯のないところに入れる取り外しができる補綴装置です。

入れ歯は1本だけの小さな部分入れ歯から、自分の歯が全てない総入れ歯までいろんな大きさや設計のデザインにより、多種多様のものがあります。

また、入れ歯は修理や増歯が容易で、高齢者にやさしい補綴装置なのですが初めて使用する方には実際使ってみて後悔される方もいらっしゃいますので、入れ歯の特性についてお話ししましょう。

 

まず、入れ歯を入れる意義についてです。

歯が欠損すると咀嚼能力が低下するだけでなく、歯が抜けたままに放置するとやがて隣の歯やかみ合っていた対合の歯が動いてきてかみ合わせがさらに悪くなって咬めなくなります。さらにかみ合わせが悪化すると顎の位置もずれてやがて顎関節症の発症や顎が下がって気道が狭くなり呼吸障害の一因になることもあります。また、前歯が欠けると見た目の問題や発音の問題も生じます。

この問題を入れ歯は外科処置や歯を大きく削ることなく解決できる利点があります。

持病や薬の服用で歯を抜くことが困難な場合でも、歯を残根にすることで歯を抜くことなく入れ歯を作ることが出来ますし、修理や歯の増歯も容易にできます。

また、ブリッジやインプラントに比べ費用を安く抑えることが出来ます。

ただし入れ歯は取り外して使うので外すと元の状態に戻ってしまいます。また他の補綴方法に比べて異物感が大きいので使えるまでに慣れや調整が必要です。

また、部分入れ歯では残っている歯に入れ歯のばねを引っかけて入れ歯を維持していくのですが、欠損部が大きくなると入れ歯も大きくなって歯のないところの骨と粘膜部(顎堤)で咬む力を支えるようになります。総入れ歯では、支える歯がなく、すべてこの顎堤で咬む力を受けて支えます。

大きな入れ歯の欠点は入れ歯を支える部分の負担が大きくなり、残りの歯に負担がかかりやすく入れ歯も動きやすくなることです。入れ歯も大きくなり違和感も増してきます。

総入れ歯は支える歯が無く、入れ歯が顎堤に吸盤状に吸い付く必要があるため、入れ歯が最大限に大きくなります。そのため違和感が最も強く、入れ歯の後縁がのどの近くまで来るため嘔吐反射を起こす人もいてどうしても難しいことがあります。

特に総入れ歯になると後悔される方が多いと聞きます

総入れ歯で後悔しやすい4つのポイントをあげてみましょう。

 

①フィット感、安定性の不足

総入れ歯は入れ歯を支える歯が全くありません。そのため入れ歯の外形や、かみ合わせを上手に調整して生体になじませていかないと、入れ歯が動いたり外れたりしてフィット感や安定性が得られなくなります。顎堤の骨が吸収してしまったなど難しい場合は術者の熟練が求められます。

②噛む力の低下と食事のストレス

歯にかかった噛んで食べる時の力が歯の歯根膜を通して顎骨に伝わります。総入れ歯はそれが無いので噛む力が顎骨に効率よく伝わらず噛む力が低下してしまいます。また、食事ではよく噛み切れなかったり、入れ歯にほとんど口腔粘膜がおおわれているので食べ物の食感や温度を感じることが困難となり、入れ歯と軟膜の間に食べ物がはさまるわずらわしさもあると食事にとてもストレスを感じることがあります。

③発音や会話の違和感

歯が無いとサ行とタ行が発音しずらくなります。入れ歯はこれを補いますが、一方で入れ歯の厚みが舌の動きを悪くします。さらに入れ歯の適合が悪いと口を動かせば入れ歯も動いてしまい発音しずらくなります。ひどいときはア行の発音をすると入れ歯が落ちてしまいます。

④メンテナンスの手間

入れ歯は人工物で使っていると汚れやにおい、細菌が繁殖してきます。保険の材料の樹脂は特に汚れやすく普段からの入れ歯の清掃が大事になります。

また、毎回取り外して使うものなので、口腔内への適合が非常に重要で、粘膜への適合や噛み合わせのチェックが欠かせません。かかりつけの歯科医院へ定期検診でチェックしてもらうようにしましょう。また、長期に使用すると人工の歯がだんだんすり減ったり、粘膜面の適合が口腔内の変化により合わなくなるので修理や新製が必要になってきます。

次にこのような後悔を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。

 

①事前に確認しておくこと

入れ歯にすることを決める前に入れ歯のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

入れ歯は比較的簡単に、費用も安く作ることが出来、お年寄りには大変優しい補綴装置です。しかし外してしまうと欠損部の歯が無くなってしまううため見た目に問題を生じ噛むことが困難になり、発音にも障害が起きます。

逆に取り外せることのメリットとして外して清掃ができること、作り直しが容易なことがあげられます

ブリッジやインプラントに比べ簡単に作れますが、落としてこわしたり無くしてしまうことがあります。また違和感も慣れるまでは強く感じがちです。

また前述のように特に食事の問題が起きやすいです。

インプラントやブリッジは何かあると作り直しになることがあり、その工程が大変になります。しかし入れ歯に比べ違和感が出ずらく噛む力も自分の歯と同じように出すことが出来ます。

メリットが多いと感じられたら入れ歯の選択もいいでしょう。自費まで選択していただければ快適なものもあります

歯が一本もなければ総義歯あるいはインプラントを併用するという選択になります。

②精密な歯型採得と調整の重要性

入れ歯も精密な歯型を採ることが非常に重要です。ここがうまくいっていないと作る入れ歯に大きな誤差が生じます。特に総入れ歯だと歯槽粘膜の深いところまで採らないと浅い入れ歯になり、安定性が悪い入れ歯が出来てしまいます。

また、総入れ歯など人工の歯の部分が大きいものは調整が常に必要になってきます。

痛みや不具合の原因はほんの少しのかみ合わせのずれが原因になることが多いのです。検診にしばらく来なかった患者さんが部分入れ歯が最近痛くなってきたとか、総入れ歯が最近合わなくなってすぐ外れるようになったので歯茎がやせたのではないかと宇われることがありますが、かみ合わせのずれを治してあげるだけで改善することがよくあります。このように入れ歯の定期的なチェックや調整は入れ歯を安全に使用していくことにおいて非常に重要なことです。これを怠ると顎堤の骨吸収が進行したり、粘膜面がフラビーガムという病的な状態に変性する原因になったりします。

③定期検診・調整のスケジュール管理

以上のような不具合を回避するためには定期検診による口腔内の管理と入れ歯の調整、入れ歯の専用洗浄剤による定期的な管理をお勧めします。3か月に1度の定期検診を習慣化するとよろしいでしょう

④自費素材のメリットとデメリット

総入れ歯にも自費の素材のものがあります。一つは金属床義歯。もう一つはコンフォート義歯です

金属床義歯とは入れ歯の口蓋の床の部分の一部を金属に置き換えたものです。メリットは金属を使うので飲食物の温度を感じやすくより自然な食事を楽しむことができ、金属の補強で入れ歯が壊れずらくなることです。デメリットはチタン床の軽い素材でなければ入れ歯が重くなること、入れ歯が合わなくなると修正が困難になることです。

コンフォート義歯は硬い入れ歯の内面を柔らかいシリコンに置き換えて痛みを軽減することです。デメリットとしてシリコンがはがれやすい。柔らかくすることで入れ歯の不具合が解消できるわけではないということです

 

以上入れ歯に関するあれこれをお伝えしましたが、入れ歯は取り外して使うもので違和感が大きなものですが、適切に調整して管理すると体の変化やお口の中の変化に対して対応しやすいもので慣れると快適に使うことが出来るということも知っておいてください