被せ物の話

口腔内の働き

皆さま、お元気ですか?2月も後半になり日の長さと日差しがだんだん増してきましたね。

今回は久々に被せ物の話をしましょう。

皆さんのお口の中に被せ物は入っていますか?

もし、入っているならきれいな状態が保たれているでしょうか。

被せ物とは?

被せ物は歯を削って歯型を採り、人工物の冠を作って歯にはめたものです。保険であれば銀色の歯が多いのですぐわかりますね。他に自費の白い被せ物や、保険の白い被せ物があります。保険の冠は時間が経過するとだんだん黄ばんできますが自費のものは変わらないという特徴があります。

なぜ、被せ物が口の中に入ることになったのでしょう。

虫歯治療と被せ物

虫歯の話をしましょう。

歯は口の中で虫歯菌や飲食物の酸によりたえずダメージを受けて表面が溶けていきます。これがやがて唾液の働きで口の中のPH(ペーハー)値があがっていくと口の中は中性になり今度は再石灰化と言って唾液に溶けていたミネラル成分を歯が取り込み溶けた表面を修復して元通りになるのですが、若年者や唾液が少ない、唾液の緩衝機能(中和機能)が弱い人、歯の清掃不良、虫歯菌が多い人は歯が溶けるほうが優勢となります。

口腔内の働き

こうなると歯の表面が慢性的に変質してCOという歯の表面が白濁した初期虫歯の状態になります。これがさらに進行すると歯に穴が開き歯を人工的に修復しなければなりません。

虫歯が小さいうちは、歯型をとる被せ物ではなくて、CRという白い穴埋め用の樹脂のパテを使います。歯を削って虫歯を取り、CRを削った穴に充填して整形し、光を当てて固めます。その後はみ出た部分を削って研磨して段差がないようにきれいに仕上げます。

昔は歯と接着させるのが問題でしたが、接着技術が飛躍的に向上して予後の成績が良くなっています。また、歯の色とCRの色を合わせるのが難しい場合がありましたが、近年カメレオン効果で周りの歯の色を拾って同化するという便利なCRも出てきました。

さらに虫歯が広がるとCRでは対処しきれなくなってきます。無理にCRで修復しても噛む力に負けて欠けてしまったり、歯と歯の間が緩くなって物がはさまってしまいます。

こうなると被せる形に歯を削って歯型を採り、人工物の被せ物を作ります。

この時点では歯の神経がある場合はほぼ部分的な被せ物になります。

さらに虫歯が進むと歯の神経が保存できなくなり歯の神経をとる治療に移行してしまいます。

被せ物は根の治療(根管治療)が終わってからになります。

この時点では歯の神経を取ってしまったので歯の強度が下がってしまい割れたり欠けやすくなります。そのため補強のために根の中にコアという人工物を入れ根が割れないよう補強します。以前は銀合金を入れていたのですが、錆びて腐食しやすく、歯に比べて硬すぎるので過酷な条件では内部で虫歯が広がったり、根が割れたりすることが良くありました。

近年ファイバーポストという歯にやさしい材料が出て、当院ではすべてこれを使用しています。

樹脂製のポストで、錆びずしなやかなので前述したようなトラブルがかなり減りました。

また金属色をしていないので被せ物から透けて黒っぽく歯がみえるような問題も解消されました。

グラスファイバーと金属の芯の比較

ファイバーポスト

被せ物も歯の神経が残っている生きている歯に対するように部分的な物を入れてはいけません。他院で治療したものを拝見するとしばしば歯の神経のない歯に見た目の問題なのでしょうか、歯を全部覆わない部分的な被せ物を見かけます。

これでは被せ物にかかる咬合力が歯を内側から外側に開くような力(正にくさびを打ち込むような)がかかり、最悪歯を真っ二つに折ることがあるので危険です。

歯の神経を取った歯には歯の全周を覆った形態の被せ物が必要です。タガ効果といって歯がバラバラにならないよう抱え込む効果があり、安全です。

被せ物の材料の種類

ここからは被せ物の材料のお話です。

被せ物の種類は材料によって主に①金属系②レジン系③セラミック系④ハイブリッド系に大きく分けられます。

これも①の金属系の材料の上に②のレジン系、③のセラミック系④のハイブリッド系の材料を白く見せるために張り付けて作る前装冠もあります。

①金属系

①の金属系ですが保険で使われる材料と保険外で使われる材料に大きく分けられます

保険では銀合金と金銀パラジウム合金が使用されます。

金属系の被せ物 金属系の被せ物

銀合金は安価ですが、物理的に弱いのと黒く変色しやすいので主に短期間使用する乳歯に使用されることが多いです。

もう一つは金銀パラジウム合金で金が12%銀が50%前後、パラジウムが20%、銅が15%~20%含まれている合金で昔から使われている非常になじみがある金属材料です。後述しますが価格の高騰、アレルギー、虫歯の問題などで他に変わる材料がいろいろと検討されてきています。最近ではチタンを使ったチタン冠が保険に入りました。

自費で使用される金属は金の含有量が非常に高く単独で入れるゴールドメタル、金属にセラミックを焼き付けるメタルボンド冠の金属フレームとして使用する金の含有量が75%以上のプレシャス合金、金50%以下のセミプレシャス合金がありますがいずれも金属価格の高騰で非常に高くなってしまいます。そのため近年はこのプレシャス系の合金に変わりコバルトボンドという安価なコバルト金属を使用したポーセレンメタルボンド(陶材焼き付け冠)を使うようになりました。

ポーセレンメタルボンド

②レジン系

②のレジン系ですが、こちらは保険で使われる材料です。

歯科で歯の修復に使用されるレジンはコンポジットレジンと言います。

コンポジットレジンは、ベースレジンとフィラーという粉末を主成分としたプラスチック材料です。歯が欠けたり、虫歯で穴が開いたところにはこれで修復します。しかしレジンは吸水性なので唾液を吸収し劣化していきます。一番の劣化は黄ばんでくるということです。被せ物に使うときは強度を強化した硬質レジンジャケット冠というすべてレジンで作られた冠を使います。こちらも経年劣化があり、割れることもよくあります。

レジン系の被せ物

③セラミック系

③セラミック系の冠も非金属系の冠です。こちらは大きく分けてポーセレンとジルコニアに分けられます。

セラミックは非吸収性なので唾液を吸収せずに臭いや汚れを寄せ付けません。審美的で歯科金属の害もなく安全です。

ポーセレンは陶材で、成型して形を作り、焼き上げることで完成します。自由に形や色をつけていくことができ、硬くて審美性に優れるので昔からよく使われていました。部分的な修復では単体で使われますが、冠としては金属やジルコニアのフレームを土台にしてその上に盛り足して焼き上げたメタルボンドやオールセラミックとして使用されます。

セラミック系の被せ物

ジルコニアも酸化ジルコニウム(ZrO₂)を主成分にしたセラミックスです。 ジルコニアは非常に大きい強度と従来のセラミックスには見られない大きな靭性値をもっていることが特徴です.

ジルコニアはポーセレンと比較して約7~10倍の強度があります。ポーセレンと異なり盛り上げるのではなく、固形のジルコニアブロックやディスクから削りだして作ります。単層または多層の色がついたものを使うので審美的にはポーセレンには劣ります。

強度重視です。次に説明するCAD/CAM冠同様歯型をスキャンしてデータを取り込みコンピューター上で冠を設計し(CAD)、専用の機械で設計通りの形をブロックから削りだし(CAM)完成する新しいシステムで作られます。

④ハイブリッド系

昔は金属の上に前装するレジンに代わりセラミックを混ぜて強度を増したハイブリッド冠を使っていましたが、現在は完全な非金属のCAD/CAM冠が主流で、保険で認められる部位が大幅に広がってきました。CAD/CAM冠とは、レジン(プラスチック)とセラミック(陶器)を混ぜたハイブリットレジン素材のブロックを、コンピューターで設計したデータを基に、機械で削って作り出す白い詰め物です。 時間が経つと変色・着色しやすい、かみ合わせが悪いと割れやすいという欠点があります。

それぞれの材料の特徴

それぞれの材料の特徴を並べて比較しますと

被せ物の比較
となります。

さらにメリット・デメリットとして分けますとこのようになります。

被せ物のメリット・デメリットの比較

被せ物に関してはよくお考えになりお気軽にご相談ください。