6月改正の保険内容を解説!

皆さまお元気ですか?

夏至の今昼が長くて気持ちがいいですね。暑くなる前に体力をつけておきましょう。熱中症対策も重要ですね。

今年は保険の6年ぶりの大改訂があって、いつもは4月から改正が施行されるのですが、今回はあまりにも大きな改定なので準備期間を設けるため2か月遅れの6月からの施行となりました。

より予防や在宅医療が手厚くされました。定期検診に関しては歯周病が軽症の場合は前回より3か月以上あけるなど期間の縛りが廃止され緩和されたものがあります。子供には口腔機能発達不全症の病名、老人にはオーラルフレイル対策として口腔機能低下症の病名が数回前の保険改正から新設ていたのですが、それぞれの病名に対して適用される年齢層の拡大やその検査と訓練法、指導管理に対しての保険が強化されました。在宅診療も条件が緩和されました。歯科外来にこれなくなった患者さんのところへ歯科医院側が自ら行き、責任を持って診なさいということです。口腔内の問題は様々な病気を引き起こし悪化させることが明らかになったので国も本気で取り組んでいるようです。当院では在宅診療やホームケアをしっかりと対応いたしますのでお気軽にお声かけ下さい。

またいま流行りの医療DXに対しても待ったなしで進んできました。身近な例でいうと保険証確認のオンライン化があげられます。あれは義務化されたもので期日までに必ず導入したうえで体制化しなければならないものでした。さらに今年の12月より健康保険証が発行されなくなりマイナンバーカードに一本化されます。今後もさらにこの流れは進んでいくでしょう。デジタル化は時代の流れですね。

治療の項目に関しては患者さんに朗報となることがいくつかありました。ご紹介いたしますと

① CAD/CAM冠適用範囲の拡大

何と言ってもこれが一番の目玉ですね。CAD/CAM冠ご存知でない方に対しご説明すると今までは虫歯を保険で治療すると虫歯を取った後の詰め物被せ物はCR充填(光を当てると硬化するプラスチックの詰め物)かあるいは型をとって金属の被せ物(銀歯又は前装冠)しかなかったものが、材料と削り出す技術の進歩によりCADというプラスチックとセラミックを混ぜて固めたブロックをCAMという機械のシステムでコンピューターで石膏模型の歯型を読み取り被せ物の設計をしてCADブロックを設計した形に削り出して被せ物を作ることができるようになりました。金属や鋳造法を使わない新たな治療法です。ただし強度や耐久性に問題があり(当院ではメタルフリーの治療を推奨しております。CAD/CAM冠は耐久性や劣化の問題で再治療になる可能性があるのでなるべくジルコニアの治療をお勧めしております)、今までは金属アレルギーをお持ちの方は全範囲適用でそれ以外の方は上下5-5の範囲(前歯、小臼歯)は無条件、6番(第一大臼歯)は条件付き適用、7番(第二大臼歯)は適用範囲外だったのが今回から7番(第二大臼歯)も条件付きで適用できるようになりました。ただし条件が少しややこしいのでできるかどうかすぐにわからないことがあります。ぜひご相談ください。

② 延長ブリッジの適応拡大

今まで歯の欠損部をブリッジで治すのに一部の条件を除いて両隣の歯を削ってブリッジの支台歯にする必要がありましたが、今回上下2番の前歯、下の1番の前歯の1本の欠損のケースで隣の歯一本のみ支台歯にしてブリッジを作ることができるようになりました。

③ 前装冠ブリッジの5番目の歯(第二大臼歯)への適用の拡大

昔はブリッジで白くできる範囲は前歯と犬歯(3-3)までに限られていたのですが、要件が緩和されて4番目の歯(第一小臼歯)まで適用となっていました。

しかし今回さらに適用範囲が拡大されて5番目の歯(第二大臼歯)まで前装して白くすることができるようになりました。これはいいと思います。外国ではあまり銀歯を見かけないですから。

④ 補綴維持管理料の一部廃止

皆さん今まで冠を保険で被せることに約束事があるのを知っていましたか?冠を被せる時に補綴物維持管理の紙をお渡ししていました。これは冠を入れたらその部位に2年間の間新しく冠を入れることができないので大切にお手入れして使ってくださいねと言うことでした。

ただしこれを厳密に運用すると2年間維持に不安のある歯は被せ物を作れないことになります。そうなると今は痛くなく噛めたり、どうしても残して被せてほしいという歯に冠を入れることができず抜歯しなければならないことになるので期間を短縮するか廃止してほしいと思っておりました。こちらで選ぶことができないからです。

これで予後に不安がある歯に対して安心して冠を入れることができるようになりました。

ただしブリッジやCAD/CAM冠は今まで通りなので予後の見通しをしっかり立てて被せ物を選ぶ必要がありますね。

保険改正の話題は以上となります。

ここでもう一つ勉強したことをお話しします。

私は今小児の成長発育について勉強を続けておりますが、熊本県の天草というところで生田歯科医院として開業してご活躍なさっている生田図南先生と藤原康生先生が講師をするセミナーを通じて最新のいろんな情報を得ております。生田歯科ではMicroexamという歯周病菌を特定するPCR検査の検査所をお持ちで当院から患者さんの検体を検査にかけてもらい歯周病菌の種類と量の分析を行ってもらい歯周内科治療に役立てております。歯周内科も生田先生が始められた治療法です。藤原先生は歯科医師でありながら保育士とケアマネージャーの資格をお持ちになり小児の口腔育成と在宅医療について学ばせてもらっています。藤原先生のお話から皆さんに伝えたいことがございましたのでご紹介させていただきます。

皆さま8020運動をご存知ですか。

80歳までに歯を20本残すことを目標に進められた運動で、現在ではとても高い水準で達成されております。この8020運動を達成された方を調べてみると正常咬合の方が

84.3%、過蓋咬合の方が20%、上顎前突の方が5.7%、反対咬合の方がぐっと少なくなり1.4%、開咬の方はいらっしゃいませんでした。どうでしょう、噛み合わせってとても重要ですね。

では、かみ合わせにかかわっている歯並びはどのようにできていくのでしょうか。全員同じ歯並びにはなりませんよね。

ではいつから歯並びに差が出てくると思いますか?

実は歯が生えてくる前から差が出てくるのです。不思議に思いませんか?

私は市の1歳半の乳幼児健診に携わっております。1歳半の年齢はだいたい上下の歯が12本(DBAABDの上下)が生えているのが多いのですが、遅い子だと8本(BAABの上下)までしか生えていないのが珍しくありません。歯列不正としてたまに反対咬合を見かけますが、BAABの萌出の場所をさえぎるものがないのに重なって生えているケースがたくさんありました。永久歯ならばスペースが無いところに生えてくるのでわかるのですが、長い間謎でした。藤原先生の講義を聞いてなるほど!と腑に落ちたのです。

お母さんたちにお尋ねします。お子さんの乳歯の歯並びはどうだったでしょう。いい歯並びでしたか、問題がありましたか?では、母乳で与えていましたか?いつまで与えていましたか?またもし哺乳瓶で授乳していたとするとどういう哺乳瓶を使っていましたか。柔らかく飲みやすい乳首でしたか、固めのしっかりと噛んで飲まなければならないタイプでしたか?

このように哺乳のやり方や期間が大切で歯が生えるまでの数か月間が子供の歯並びを決めているのです。

このことについては床矯正研究会の花田先生が新しく提唱した離乳食についても併せて詳しく解説していきたいと思います。