皆さま、まだ時々寒い日がありますね。かぜをひかないよう注意してくださいね。
今回も言葉の問題の続きです。
それでは、言葉を作ること「構音」について深堀していきましょう。
あまり詳しく説明すると大変なので、端折って行きます。そういうものだと思ってください。
「構音」の様式
「構音」の様式は5つあります。
- 破裂音
- 摩擦音
- 破擦音
- 弾音
- 鼻音
です。
①破裂音
呼気の流れを止めて勢いよく息を出して発音します。
「ぱ、ば行」「た、だ行」「か、が行」は破裂音です
②摩擦音
狭いすきまに呼気を通すことで摩擦が起き、発音します。
「さ行」「は行」
③破擦音
一度呼気の流れを完全に止めたあと摩擦しながら息を出します
「ち」「つ」「ちゃ、ちゅ、ちょ」
④弾音
舌尖を歯頚部(歯の根元)ではじいて作られます
ライオン(Lion)のLの部分の発音です。日本語ではラビット(Rabbit)のRの発音も同じですが、英語では明らかに区別されます。日本人では難しいですね。
⑤鼻音
呼気が鼻腔を通って共鳴する音です。
「ば行」「ま行」「な行」「にゃ行」文中の「が行」「ん」
これが正常の構音様式です。
構音障害について
それでは次に構音障害について触れていきましょう。
構音障害は原因から大きく分類して次の3つに分けられます。
- 運動障害性構音(脳性まひなど)
- 器質的構音障害(口蓋裂、歯列不正など)
- 機能的構音障害(舌や口唇の機能が弱い)
種類で分けると以下のとおりです。
- 置換(目的の音とは違った別の音に置き換わった状態)「さかな→たかな」「ラッパ→ダッパ」「パンダ→パンナ」
- 省略(音が抜け落ちてしまった状態)「ラッパ→アッパ」「コップ→オップ」「たいこ→あいお」
- 歪み(日本語の音として聞き取れない歪んだ音の状態)
- 歯間化構音(舌が上下の前歯間に突出して発語Sがθになる)
- 側音化構音(「シ」は「ヒ」に、「チ」は「キ」に近い音に聞こえる)
- 口蓋化構音(「タ」は「カ」に、「サ」は「ヒャ」や「シャ」に近い音に聞こえる)
- 鼻咽腔構音(クンクン言っているように聞こえる)
- 声門破裂音(母音を強く発声したように聞こえる)
これらの原因について考えてみましょう。
1)原始反射(舌突出反射)の残存
原始反射は乳幼児期にみられる生命維持や発育発達のために、呼吸や嚥下反射をつかさどっている脳幹(第一次中枢)が指令しています。成長して大脳辺縁系や大脳皮質が発達すると原始反射は消えます。脳の未発達が原因です。高齢者の脳機能が衰えたり(認知症)、脳血管疾患で大脳に損傷すると原始反射が復活して構音障害になるケースがあります。
2)舌筋や舌骨上筋群の成長不足(低位舌)
3)口腔内の容積不足(中顔面の前後的劣成長)
このうち、⑤の側音化構音(し→ひ、ち→き、り→ぎ、に聞こえる)は2)や3)の原因で舌が上に上がらないので口を「い」の形にして顎を持ち上げて代償して発音しているのです。
⑥の口蓋化構音は「た行」「ざ行」が「か行」「が行」に聞こえ、「たいこ」が「かいこ」、「パンダ」が「パンガ」になります。これは舌尖や前舌の機能が不十分で中舌や奥舌で代償した結果です。
⑦の鼻咽腔構音は息が鼻からもれます。開鼻音の「な行」や「ま行」に聞こえます。「ラッパ」→「ナッパ」
これは軟口蓋や奥舌の挙上不足の結果です。機能が低下した高齢者にも見られます。
⑧声門破裂音「あ゛・い゛・う゛・え゛・お゛」に聞こえる
「ぱんだ」→「あ゛んあ゛」、「らっぱ」→「らっあ゛」
これは鼻咽腔機能が不十分で口腔内で息をためるのが難しく声門で破裂音を作って発音しているのです。
舌が上がらない、口唇も使えない状態ですので、通常「ぱ、だ、か」の破裂音は舌と口唇で発音しますが、この舌や口唇の機能が不十分な場合、声門を破裂させ発音します。
一番重症なのがこの声門破裂音です。
構音器官である上顎骨の劣成長や歯列不正が原因です。
高齢者では、歯を失ったりして器質的な構音障害があります。
入れ歯を入れた時の発音と入れない時の発音では明らかに差があり、入れたときのほうが構音しやすくなり、入れないと構音障害になります。
また、子供がすべての音を正確に構音できる年齢は5歳くらいになります。
成長には順序性がある
言葉を覚える順序も決まっております。
以前にもお話ししましたが、成長には順序性があります。
1つの機能が働くようになると、その機能を基礎として次の機能が現れます。
発音を覚える順序です。
- 2歳までにマ行、バ行、パ行、ヤ行、ワ行、ナ行、タトテ、ダデドが言えるようになります
- 2~4歳までにカ行、ガ行、チ、チャ行、シ、ジ、ジャ、ジャ行、ハ行
- 4~5歳までにサスセソ、ザズゼゾ、ツ、ラリルレロ
となります。
タやダは前方での破裂音なので早くから覚えやすいようです。
一方ラリルレロのはじき音やサシスセソの摩擦音はその前に覚える機能が獲得できていなければ発音できません。
「マ行」や「パ行」は習得が早く、必要な機能を獲得できていなければ発語できない「サ行」「ラ行」は習得が遅いのです。
言葉の誤りには
- いずれ適切に構音できるようになって、自然になくなるもの
- 後まで問題が残って慎重な対処を必要とするもの
があります
①さかな②ラッパ③パンダ④キリン⑤たいこをお子さんに言わせてみてください。
年長さんクラスになってもこれらがうまく言えない場合は顎骨や口腔関連筋の劣成長の可能性があります。
小学校に上がっても言葉に「置換」や「省略」がある場合は、自然に治らない可能性があります。
「歪み」がある場合も自然に治らないため発見した時点で対応すべきです。
わずかでも構音に遅れが認められる子供には積極的に対応する必要があります。
これらは歯科で対応いたします。
構音障害の原因の1つは構音器官である口腔の発達不全です。
叢生やせまい歯列、舌癖、開咬、指しゃぶり、低位舌があったりすると5歳では構音に問題がみられることが多いです。
一方0~2歳に口腔が十分成長している場合は虫歯があっても構音や発達には影響が少ないようです。
よって0~2歳での口腔育成が良好だと構音が完成する5歳では構音障害は見られないようです。口腔育成に問題があると、5歳になっても構音障害が残り、構音が完成する前に手を打つ必要があります。歯医者で口腔育成が必要です。
たかな→ちゃかな→しゃかな→さかな。のような変化は正常な成長です。
口腔と構音は密接に関係していて、歯列の成長、中顔面が前方に成長しているかが重要になってきます。
口腔育成の他に、構音訓練も重要です。
それでは、歯科で行う構音訓練にはどういったものがあるでしょうか。
大きく5つに分類されます。
- 食育
- 呼吸機能訓練
- 舌機能訓練
- 嚥下機能訓練
- 口腔周囲筋訓練
があります。
言葉の話し、もう少し続けてもよろしいでしょうか。ぜひお付き合いください。
次回もこの話の続きをいたします。