こどもの口腔機能について③

boy having a dental checkup

皆さま、新しい環境にはもう慣れたでしょうか。元気に過ごしてください。
今回の内容も前回の続きです。
前回は口腔の機能のうち、食べる機能についてお知らせしましたね。
このことについて理解が深まると、とても重要で皆さんに本当に理解していただきたいのでまずは、もう一度お伝えしておきましょう。

①哺乳は正しくしっかりさせましょう

食べることに対する機能の獲得に非常に深くかかわっていました。また、上あごに負荷をかけることになり、前歯が生える部分の骨を成長させるので歯が生えてきたときの歯並びに大きくかかわっています。最初のこの部分の成長に成功すると以後の歯並びの管理が楽になります。

②与える食事について

以前のブログでも触れましたが、食物で窒息事故が起こったために、その対策として給食では、細かく刻んだ柔らかい食べ物を出すようなところがあります。これは根本的に間違っていて、一口量を覚えるために口の大きさよりも大きいサイズにした食べ物を与えてください。自分でかじって食べるようになり、自分の一口量を覚えるので、窒息や誤嚥の事故を起こさなくなります。
かえって一口量より小さい一口大の大きさに切ってしまうと、食べ方がわからない子は噛まずに丸のみしてしまい危険です。
まず、このことを理解してください。
今回は口腔の機能の2つ目、話す機能についてお話しします。

話す機能について

話すことに関しては口腔機能発達不全症にも検査項目がある、重要な口腔機能です。
今年の3月から、新型コロナ感染症に対する扱いが変わりましたね。5月8日から2類から5類へと感染症の分類が変更され、季節性インフルエンザと同じ扱いになります。すでに3月13日から、マスク着用義務化がなくなり、個人の判断に委ねられましたね。
皆さんはまだマスクを付けて過ごしていますか?私たち大人はどちらでもよいと思います。もっと言うと中学生以上であれば問題ないでしょう。
でも、それより小さい子供にとっては大きな影響を及ぼしてしまいます。何でしょう。そしてなぜでしょう。
マスクが「構音障害」に影響するのです。
「構音障害」とは言語障害の一つで、同じ発達年齢の人が正しく発音できる音を習慣的に誤って発音している状態を指します。
3年前の新型コロナのパンデミックで「新しい生活様式」が提唱され、ソーシャルディスタンスという言葉がすっかりおなじみになりましたね。
ソーシャルディスタンスとは3つの密、密閉・密集・密接のうちの密集と密接に関係しています。
3年前より子供たちの育つ環境が変わり、ソーシャルディスタンスを守ることで人との接触を避けるようになりました。
マスクをするだけでなく、

  1. 正面から顔を見ない
  2. できるだけ話さない
  3. 心の中で歌う

ということも推奨され、お家に帰ってもマスクをしたままではなかったでしょうか。
明和 政子さんの著者「マスク社会が危ない」という本を興味のある方は探してお読みになってください。他に書かれた「心が芽生えるとき」「なぜ真似をするのか」という本もこれから触れる内容の参考になります。
マスクをして育つとIQが下がる。構音障害が増える。というショッキングなことが触れられております。
子供の言葉や脳の発達は他者との会話や人間的接触によって培われるそうです。
マスクによって顔の表情が見えなくなり、子供の脳の発達に悪影響があるようです。
マスクをみんながするようになって皆さんはどう変わりましたか?私は外ではマスクですぐ眼鏡が曇ってしまい、大変でした。普段からマスクをする仕事なのでそれ以外はまったく変わりませんでした。そうです。もともと仕事でマスクを常時つけていました。それでも患者さんと挨拶して会話をするときはマスクを外していたのですが、それもいつの間にかやめておりました。いまさらちょっと戻しにくい感じがします。
いろいろ隠せて便利だと思った方もいるでしょう。歯科では矯正治療が増えたそうです。
子供にとっても表情を隠せるので楽だった子もいることでしょう。
その一方、子供たちが人見知りをしなくなったと言われています。
人見知りをしなくなったということは、一見良かったのではないかと思いませんか?わたしもそう思いました。
実は「人見知り」は成長と賢さの表れだそうです。
赤ちゃんは相手の顔から色々なことを学んで母親などの「特定の人」を理解できるようになるそうです。「人見知り」は赤ちゃんが馴染みのある人とそうでない人を区別できるようになった証です。マスクはそれを学ぶ機会を減らしているそうです。
もう一つ言われるのは言葉の修得が遅くなった気がするということです。
赤ちゃんは口元の動きを見て、同時に口元から発せられる音声を聞きながら自分自身で表情や口の形を「まね」ながら言葉を獲得していきます。
有名なメルツォフとムーアの実験「新生児模倣」では、大人が赤ちゃんに対し、舌を”ベー”と出したり、口を開けて”あー”と言う動きをしたり、口をすぼめて”うー”と言う動きをしたりすると、それを見ていた赤ちゃんも真似をして同じような仕草をしました。
これは「新生児や乳児が大人の表情や動作と同様の反応を示す現象です。
赤ちゃんがいたらやってみてください。例えば向かい合って口を開けたり、舌を出したりすると赤ちゃんはじっと見ていて、しばらくすると同じような動きをします。
発展途上の脳を持つ子供は目や音声だけでなく、豊かに動く口元や表情の情報から言葉を修得していくのです。
800年前に皇帝フリードリッヒ2世が人間の言葉をいっさい聞かずに育った子供は人類の根源語を話すに違いないと思いある実験をしました。
それは赤ちゃんを集めて、乳母に・話しかけてはいけない・目を見てはいけない・笑いかけてはいけない・スキンシップしてはいけないということを命じ、入浴、食事など生命維持に必要なこと以外の人間的接触を禁じて育てたそうです。
その結果どうなったと思いますか?
3歳までにほとんどの子供が死亡してしまったそうです。
乳幼児期の「言葉と人間的接触」が命を育むとルネ・スピッツというコロラド大学の精神分析家が提唱しています。
第二次大戦後に戦争孤児を集めてフリードリッヒと同じような実験をしたそうです。
そうすると、約半分の子供が2年以内に死亡し、残りの3分の2が成人前に死亡し、最後まで残った子供のほとんどが言語障害、知的障害、情緒障害が見られたそうです。
これは子供の成長においていかに人との顔を見ての声掛けやスキンシップが重要だということ示しています。
表情や声掛けのコミュニケーションは生存にまで影響を与えるのですね。
イギリスの発達心理学者ジョン・ボウも乳幼児期の他人との愛着の有無が、その後の子供の脳の発達に大きく影響すると伝えています。
皆さん、現在まで続いていた”3密”の対策はフリードリッヒや戦争孤児に行った実験と同じ実験をしていると思いませんか?
赤ちゃんや乳幼児をよく観察すると人の顔をよく見ていませんか?
子供は人の顔をもっとも見続けています。乳幼児は人の顔を集中的に注意を向け続け、視線の先の顔を手掛かりに人間の感情を認識して言葉を覚えることを学ぶのだそうです。
そうすると新型コロナの影響はこれから起きてくるのでしょう。発達の遅れとして、言葉を覚えて発語することに問題を起こす子が増えてきそうです。次回ももっと掘り下げていきましょう。