これまで取り組んできた歯科治療を振り返って

皆様、新年あけましておめでとございます。本年もよろしくお願いします。

 

昨年を振り返ると様々な取り組みが実を結んでまいりました。

以前を振り返ってみると治療の内容も変わってきております。

 

当院は山の手に移転をして今年で5年目を迎えます。創業は2001年で琴似で開業しましたので22年目になります。以前は悪いところをひたすら治療して、悪くなりそうなところも探し出して治療する治療中心の臨床でした。真面目にしっかりした治療を行っていくのが最優先で、とにかく虫歯があれば取り除き、歯周病があれば歯石を除去し、治りが悪ければ歯周外科を行いできるだけ歯が残るような歯周病治療を積極的にして、かぶせ物の悪いところも見つけて被せなおし、ぐらぐらして不安な歯はできるだけつないで治し、あとは定期健診で管理していけばよい。歯の汚れも定期的に取っていけばよいという治療中心、私たちに任せてくれればよいという発想で歯科医院を運営してまいりました。しかし中には悪いところがしっかり治らず再発してきたり、悪いところの進行が止まらないばかりでなく周囲の歯も巻き込んで悪いところが増えてしまうケースがありました。

また、当初は歯周病で歯が広がってしまった歯や傾いている歯、虫歯で歯の大部分が失われて骨に埋まった根っこの歯を引っ張り上げるような部分矯正しか行っておりませんでしたが、歯並びの悪い子供やこれから歯の交換期にさしかかり歯並びが悪くなると予測できる子供を目の当たりにし、放置して良いものかと苦しんでおりました。

 

なぜ治療したのに歯が悪くなっていくのかという疑問ですが、咬合と歯にかかる力が大きく影響していることがわかりました。

きっかけは東京歯科大学出身で現在は栃木で診療されている丹羽 克味先生のベクトル咬合論、咀嚼・咬合論を学んだことです。那須塩原市まで出かけていき理論だけでなく実習も手掛けてまいりました。歯にかかる力の方向を理解して咬合調整により歯にかかる力を適切な方向へ向けられるようになりました。

いままで噛むと痛い、歯がいずい、しみる、違和感があるなど、それほど強い痛みではないが調子が悪いので虫歯ではないかと受診される方がいらっしゃいますが、明らかな虫歯がない方がたくさんいらっしゃいました。他医院では様子を見てと放置されるか、虫歯だと判断され歯を削られていたかもしれません。

当院では虫歯の可能性が低い場合噛み合わせのチェックを行います。赤い紙を噛んでもらい歯の横に指をあてながら歯ぎしりもしてもらい動かされていないか確認し、歯に印記された場所を確認します。歯が動かされている感覚があれば歯に良くないベクトルの力がかかっていると推測できます。

その原因となっている接触点を削って歯にかかる力の方向をコントロールします。それにより歯の横揺れがなくなります。歯が軽くなり調子が良くなる方がたくさんいらっしゃいました。

このように噛み合わせの治療は非常に大事で噛み合わせの診断と調整ができない歯医者は歯医者でないと私は思っております。歯医者でなければ治せないからです。

 

入れ歯の治療でも同様です。総入れ歯では患者さんが入れ歯が合わなくなってきた。歯茎がやせてしまったからではないかと訴えていらっしゃる患者さんが多いですが、抜歯した後や重病にかかり大変な療養生活を送った人でなければ短期間に顎堤の吸収の変化が原因はごく少数です。ほとんどは辺縁封鎖の不良か噛み合わせの不調によるものです。

総入れ歯は部分入れ歯と異なり入れ歯を支える歯がありません。そのため入れ歯の吸盤のような吸着と噛み合わせの安定が不可欠です。

そのために入れ歯の適合審査を行いますが、より重要なのは噛み合わせです。

当初はそれもわからず粘膜との不適合が原因ではないかと思いリベース(入れ歯の内面の裏打ち)してばかりおりました。

裏打ちした当初はよいのですがすぐに合わなくなってきてしまいます。また裏打ちを繰り返すのですが、そのうち入れ歯がとても厚くなってきてしまします。なぜでしょうか。これは噛み合わせがかなり影響しております。

総入れ歯は歯で支えてもらう部分がないために粘膜で吸着し、頬っぺたと舌で押さえて支え、咬合で安定させなければなりません。入れ歯が外れる方向へかかる力を咬合調整で排除して顎の中心へ向かう力に変えなければなりません。そうしないと噛んだ時に入れ歯が浮いてしまします。よくあるのが噛み合わせたときに入れ歯の前歯の部分にあたり、入れ歯の後ろが浮いてしまうことです。これを噛み合わせの干渉を考えずに補正してしまうと入れ歯の後ろの部分のみ修正され、張り替えるたびに入れ歯が厚くなってしまいます。さらに咬合を知らないと入れ歯が噛み合わせるたびに動いてしまい、顎堤の粘膜に当たってしまい、痛いと言われてしまいます。

これが実際の歯だったらどうでしょう。歯を動かす力を逃がすことができずにまともに受け取ってしまいますよね。短期間には外傷性咬合として違和感や軽度の痛みとして一時的なものとして現れますが、改善できずに長期に経過してしまうと今度は虫歯に移行したり、咬合性外傷に移行して骨が失われ急速に進行した歯周病として発症してしまいます。

このように咬合の調整は入れ歯の安定に欠かせません。動かない入れ歯は噛めるだけでなく痛みも起こさず、脳を活性化させ認知症の発生の抑制やや運動機能の維持にも大きな影響を与えます。

 

次に歯にかかる力の大きさについてです。

歯にかかる力の方向は解決しましたが、歯にかかる力の大きさそのものの問題があります。歯にかかる力の問題は力を分散させ歯根の方向へ向けさせることである程度解決できますが、歯にかかる力の大きさそのもは解決出来ておりません。

歯にかかる力を支えているのは歯と骨をつなぐ歯周靭帯と歯槽骨です。瞬間的な大きな力には対応できますが持続的な力にはだんだん疲労してその結果失われていきます。

これは噛み癖や様々な原因で引き起こされるブラキシズム、歯を接触させる癖であるTCHが関係しています。

これに関連して治りやすい歯周病と治りにくい歯周病という著書を著した北大の先輩で札幌で開業しておられます池田雅彦先生の歯周病ニューコンセプトの6DAYSコースを学び力のマネージングについて学びました。主に診断用スプリントを用いて力がかかっていることを診断し、治療用スプリントに移行し、暗示療法も行ってもらい対応しております。

さらに予防歯科として予防歯科として岡山のオリーブデンタルクリニックの衛生士藤原先生に“術者磨き”を伝授してもらい当院の定期検診に反映させていただいております。

子供の矯正としては以前のブログでも触れましたが床矯正研究会に所属して床矯正というものを学び歯交換期(成長期)のお子様を中心としての子供の矯正を行うようになりました。こちらは北海道地区の評議員を拝命し、北海道で床矯正を広めていく使命を任されております。

そして最近の取り組みとして北海道の根室で開業されていらっしゃる名古屋先生のご指導の下、保険の銀歯から患者さんを解放しようというコンセプトのもとメタルフリーの方針で治療をしております。保険の銀歯は必ず錆びるのであとで虫歯を作ったりして再治療になることが殆どです。すべては患者さんの健康のために取り組んでおりますので賛同していただけると嬉しいです。
これからの取り組みの話は次回にしましょう。新しい矯正、ホワイトニング、力のコントロールの治療、新しい歯周病治療、快適な入れ歯がキーワードです。患者さんがあまり頑張らなくてよい治療を目指しております。