皆さんお元気ですか?札幌ではもう桜が開花しました!今年はとっても春が早く来ましたね。うれしいことです。
さて、今回の内容も前回の続きとなります。
子供は他人の顔を見て真似をして成長していきます。そのためマスクは小さな子供にとってとても問題のあるアイテムだとお話ししました。
脳トレのゲームソフトを開発した教授によると実際に誰かの顔を見て話をすると脳の前頭前野と呼ばれる分野が大いに活動するそうです。それなのにテレビ電話など、直接面と向き合わない間接的なコミュニケーションでは、この前頭前野が全く働かないそうです。
実際に誰かの顔を見ないコミュニケーションは子供の言語や知能の発達に悪影響を及ぼすそうです。
以前にもお話ししましたが、言葉の感受性期(臨界期)は0~9歳です。(感受性期とは一生に一度しかない成長の絶対期間)
9歳までにどれだけ言葉による刺激を受けたかどうかで言語に関わっている神経を髄鞘化して機能させるかどうか決定してしまうそうです。マスク生活は危険ですね。中学生以上なら感受性期を過ぎているので心配いりません。
言葉の発達障害
マスク生活は子供の成長にかかせない人間的な接触が欠乏してしまい、今後子供たちが言葉の発達障害を起こしていかないかとても心配になります。
言葉の発達障害とは、主に構音障害です。
構音とは、脳から声を出す指令を受けると、肺から息をはき出し、のどにある声帯を震わせて声を作り、最後に舌の形を変えたり、口を動かすことで、思い通りの音を作ります。 この音を作る過程を「構音(発音)」と呼びます。
構音障害とはその地域や集団の中で、年齢相応の構音(発音)ができていないために、コミュニケーションに支障をきたしている場合のことをいいます。これは周りの子供や大人が話している音を聞いてその音を忠実に作り出すことができないのです。
構音障害の多くは脳の発達障害として捉えられています。脳は6歳ごろまでに急激に成長しますので、構音障害は乳幼児期に対応しなければなりません。
保育士や保護者の皆さんに是非観察して発見してもらいたいことがあります。
これは子供の発育に関する3つの事です。
- 歯と歯の間に隙間がない。発育空隙や霊長空隙というものの隙間がないと歯列不正になっていくので、歯医者に是非つれていってもらいたいです。
- 言葉の問題(構音障害や言葉の習得が遅いこと)
- お口ポカンしている
このような状態が見られましたら感受性期のうちに早急に対策してもらいたいと思います。
また、言葉の習得状態から子供の成長発達の状態も観察することが可能です。
ちょっと難しい話になりますので参考までに読んでください。
耳から聞こえた音を脳の側頭葉のウエルニッケ野という領域で理解した音の情報を脳の前頭葉のブローカ-野に伝えます。これは耳から得た音の情報ですね。今度はその情報に対して言葉を構音しようとすると、発語する指令がブローカー野から運動野に伝わって、構音器官(声帯、口唇、舌、軟口蓋、顎など)の筋肉を動かし言葉となります。
実際に話そうとする意思は前頭前野から起こって、ブローカー野に伝わります。
そこから運動野に指令が行き、続いて運動野から構音器官に指令がいきます。しかし、この固くて形を変えることができませんね。ここが歯医者が特に関わる部分となります。
それでは今度は構音器官についてくわしくお話ししていきましょう。
構音器官
①声帯
のどぼとけあたりにある器官で、肺からの息の流れが声帯を振動させることで音が作られます。声帯の状態で有声音と無声音があります。無声音は声帯が開いた状態で「パ」、「タ」、「カ」があります。ひそひそ話をするときもこの状態です。有声音は声帯が閉じた状態で、「バ」、「ダ」、「ガ」がこれに当たります。
②咽頭
・喉の奥の空間で軟口蓋により上咽頭と中咽頭に分けられます。軟口蓋が下がると鼻からの空気の流れが開き「ナ」、「マ」、「ガ」、「ン」行の発音を行います。開鼻音と言われています。それ以外は軟口蓋が上に上がって、鼻の通り道をふさいで発語します。また、軟口蓋を上にあげられないと食べ物を誤嚥することがあります。
ちょっとやってみてください。鼻をつまんで、「マ行」と「ア行」の発音をしてみてください。どうですか?「ア行」は正しく発音できますね。「マ行」はうまくしゃべれませんね。
③舌
舌は前から舌尖、前舌、中舌、奥舌と分けられます。
破裂音は舌を構音店(あとで述べます)に舌をつけて発声します。摩擦音は舌を近づけて発声します。弾音はじき音は舌をはじいて発音します。
④口唇
口唇を閉じた後、破裂させて「パ」行、「バ」行を発語します。口唇を閉じたまま鼻から空気を通して「マ」行を発語します。
次に構音点についてお話しします。(興味がなければ読み飛ばしてくださいね。)
構音点とは肺から押し出された呼気が声帯から口唇や鼻までの通り道のどこかの部分を狭くすることで音を作るどこかの部分の場所のことを言います。
7つあるので挙げておきますね。
構音点
①口唇→「ぱ」②舌尖と歯→「つ」③舌尖と歯茎→「な」④前舌と硬口蓋→「ら」⑤中舌と硬口蓋→「き」⑥奥舌と軟口蓋→「か」⑦声門「あ」
構音障害に戻りましょう。
子供に「ガ行」「サ行」「タ行」「ナ行」「ラ行」を言わせてみて判断してみましょう。
例えば、「さかな」を言わせてみましょう。「さ」は歯頚音(舌が歯と歯茎の境目にある)です。これが「ちゃかな」、「たかな」になる場合、いわゆる赤ちゃん言葉で舌の位置は同じなので心配いりません。(子供は耳から得た情報を、正しく発語しようとしていますが、それがうまくできないのです。赤ちゃん言葉で返すのはいけませんよ!)
舌の先端が歯頚にいかず、舌が下がったままで横から空気が漏れる状態の「ひゃかな」になる場合は注意が必要です。
やってみてください。スプーンで舌を押して「さかな」を発音すると「ひゃかな」になりませんか?舌が上に行かない状態で、横から空気が漏れる側音化構音という構音障害の状態です。機能化訓練が必要です。
構音点を狭くする方法
構音点を狭くする方法は3つあります。
- 声帯の開閉
- 舌の上下運動
- 口唇の開閉
となります。
構音障害は舌や口唇などの機能が低下している場合が多いです。
歯や上顎骨の成長の状態にも左右されます。
次に日本語の仕組みについてお話しします。
日本語の母音は「あ」「い」「う」「え」「お」です。
構音点はどれも声帯で有声音です。顎、口唇、舌が口腔の形を変化させて響きを変えて咽頭、口腔で共鳴して発語します。口唇、顎、舌の絶妙な協力関係で音を区別しています。
日本語の子音
日本語の子音は次の3つによって作られ発語されています。
- 構音点(音の作られる位置)
- 構音様式(音の作られ方)
- 声の有無(有声音、無声音)
正しく発音できないとき、①、②、③のうちどの問題があるのか明らかにしなければなりません。
発音の仕組み、構音障害について次回もさらに深堀していきますがよろしいでしょうか?私もいままでこれほど発声について深く学んだことはありませんでした。せっかくの機会なので是非知っておいてください。小児の口腔機能発達不全症には発音の機能についてチェックがなされています。言葉の問題が重要であること、歯科との関わり合いが大きいことが示されています。すみませんが図示していないので分かりにくいかもしれませんが難しかったり興味ないところは読み飛ばしてください。